↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢(男)と攻略対象(女)、理不尽な乙女ゲームの世界を変える  作者: 文字書きA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/117

第42話:おはよう

翌朝。起きてきたポウムは、2人仲良く並んで眠っている王子と令嬢を見て声を上げた。


「まあ……!」


弾(はず)む声色。栗色(くりいろ)の瞳(ひとみ)がキラキラと輝(かがや)く。


「おめでとうございます。昨夜はお楽しみだったのですね」


「……うん?」


先に目を開けたジュリアは、嫌な予感がして口を開いた。寝起きで掠(かす)れた声が出る。


「あの、なにか勘違(かんちが)いをして……」


「大丈夫です!」


ポウムはジュリアの話をまったく聞かず、胸(むね)を張った。


「私、誰にも言いませんから! もう少し、ごゆっくり! なにかあれば、いつでも呼んでくださいね」


そう言って、召使いは止めるヒマもなく小部屋に戻る。彼女の背(せ)に向かって手を伸ばしかけていたジュリアは、しばらくしてからその手を下ろした。


「……違うのに」


「……ん……」


横にいるクリスが寝返りをうつ。


「もうちょっと、寝かせて……」


言葉の後に、すぐに寝息(ねいき)が聞こえてくる。ジュリアはため息をついて、先にベッドから出た。彼女は眠る彼の近く、ベッドの端(はし)に腰(こし)を下ろす。部屋のドアが、外から軽くノックされる。


「……どうぞ」


誰が来たのか。彼女には、なんとなくわかっていた。ドアが少しだけ開けられて、その隙間(すきま)から男が入ってくる。それは、使用人の服を着たシリルだった。


「クリスはまだ寝てるのか」


「……ええ。昨日、遅かったから」


ベッドの横に歩み寄って、スヤスヤと眠る王子を見下ろし、男は深い息をはきだす。


「……オレは自分のために生きてきた。今も昔も」


無言のまま、ジュリアは彼を見つめる。真剣な横顔(よこがお)。そのまなざしには思いやりと、わずかな熱がこめられていた。


「それでいいと、思ってたのにな……」


自分に言い聞かせるように、シリルはつぶやく。だが、眠るクリスから目を離さない彼の姿からは、言葉には出せない彼の本音(ほんね)が伝わってきた。


(良かったな。うまくいってるみたいだぞ)


ジュリアは昨夜(さくや)、主人公のようになれなくて、泣いていたクリスを思いだす。この状況は、誰よりも。彼が望んでいたことだ。――だが。


「クリス様は」


ジュリアはたまらず、口を開いた。シリルの目が、彼女に向けられる。


「私(わたくし)の、婚約者ですからね」


前半の言葉に、とりわけ強い意志をこめて。彼女は強い口調(くちょう)で言った。2人の視線がぶつかる。少しの間、互いににらみあって。先に折(お)れたのは、シリルだった。


「貴族ってのはしがらみが多いな」


「そもそも、あなたがたは同性(どうせい)でしょう」


「何を想像してるか知らねえが、そんなつもりはねえ。今朝(けさ)だって、礼(れい)がしたくて来ただけだ」


「でしたらどうぞ、お引き取りを。今はクリス様を休ませてあげてくださいな」


「邪魔はしねえ。側(そば)にいるくらい、いいだろう。……同じ男なんだからな」


互いに引かない、2人のやり取り。それはクリスを起こさないために、抑(おさ)えた声で続けられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。