第34話:外出(後編)
世間話をしていたら、いつの間にか日が傾いていた。ジュリアはクリスに連れられて、部屋を出る。
「服、どこで着替えるんだ?」
「空き部屋があるから、そこでいいかな。下の服は変えなくていいよ。ドレスだけ脱いで、使用人の服とフード付きのマントを着よう」
そう言って、彼は廊下を真っすぐ進み、階段を下りた。城の裏側、人が少ないほうに向かって、彼は小部屋の扉を開ける。
「じゃあ、これを着て」
「……おう」
小部屋の中は狭くて暗く、少しジメッとしていた。クリスの手を借りてドレスを脱いで、彼に手渡されたツギハギだらけのワンピースに袖を通しながら、ジュリアはつぶやく。
「シルクって、こっちだと貴重品なんだっけ」
「そうだね。庶民の手には入らない」
そんな言葉を返しながら、クリスも自分の服を替える。2人が着たのは動物の皮を素材にした物で、ゴワゴワとしていてあまり着心地は良くなかった。
「これを上に羽織って、君はフードを被っておいてね」
ジュリアは彼に言われたとおりに、ワンピースの上から黒いフード付きのマントを着る。そして顔を隠すように、フードを下ろした。クリスも同じマントを着て、彼女の手を引く。
「何も言わなくていいから」
そう告げて、彼は裏門の方に回る。門の警備をしていた衛兵たちは、彼の姿を見て声を上げた。
「で、殿下……?! なぜ、このような所に……」
「シッ。何も言わず、何も聞くな。これは命令だ。今日、僕がここに来たことも秘密にしろ。……いいな?」
クリスは鋭いまなざしで彼らをにらんで、低い声で命令した。その言葉に、彼らは慌てて姿勢を正す。
「は、はい!」
「わ、分かりました! どうぞ、お通りください」
王子の圧に負けて、衛兵たちは道を開けた。クリスはジュリアと手を繋いだまま、その間を抜けていく。
赤く染まった坂道を下る途中で、ジュリアは周りを確認しながら、ひそめた声でささやいた。
「……そういうイベント?」
「うん。本当は、一緒にいるのはポウムだけどね」
うなずいて、フードで顔を隠しながら。彼は街に向かっていく。その足どりに、迷いはなかった。
「今までに、城から出たことはないんだよな。道は知ってるのか?」
「そうだね、いちおう……。設定集にも、街の地図は無かったんだけど。王宮の資料の中にあったから、原作のシーンと照らし合わせて、だいたいの位置は割りだしてるよ」
クリスの言葉に、ジュリアは感心したような様子を見せる。2人は赤い光が当たっている石だたみの道を早足で進みながら、酒場を目指した。




