第31話:夜話
「……でもさ。貴族らしくないところって、どうやって見せればいいんだ? そもそも、シリルと個人的に会う方法なんてあるのか?」
「そこは任せて。僕は彼らが拠点として使っている酒場を知っているから」
そう言って、クリスは窓のほうを見た。
「……それにしても、正確な時間が分からないのは不便だね。時計があればいいんだけど。砂時計とか、この世界にあるのかなあ」
「……分かんねえな。作れねえし」
ジュリアもつられて、同じ方向に目を向ける。日が沈んでから、もう3時間くらいは経っているような気はするが、それはあくまでも体感だ。
「ちなみにゲームではどうだったんだ?」
「昼と夜で1回ずつ行動する。それが30回で1ヶ月。1ヶ月が4回で1年。3年で1個のエンディングが見られる」
サラリと告げて、クリスは困ったように目を伏せた。
「だから正直、1番気にしてるのはイベントを起こす順番と時期だよ。砂時計があっても、あれって数分しか測れないし」
「……なるほどな」
ジュリアは納得して、イスに座った。
「けど、まだ眠くなったわけじゃねえだろ? だったらもう少し話していようぜ」
「……ああ、そうだね」
クリスもうなずき、彼女の向かいにある椅子を引いて腰を下ろす。そして彼は、少し考えてから口を開いた。
「……君はゲームとかやってたの?」
「あー……。ソシャゲとかなら。あと、有名なやつはそれなりに」
孝太はどちらかというと運動することの方が好きだったが、それでも友人につきあっていくつかのゲームをしたことはあった。日本人なら誰でも聞いたことがあるタイトルを2個ほど上げて、ジュリアになった彼は続ける。
「なんか、お前は色々やってそうだな」
「まあ、そうだね。僕はインドア派だったから」
オタクの自覚があるクリス(日奈)は、胸を張って返した。
「アプグラ以外の乙女ゲームも色々やったよ。君は知らないと思うから、名前は出さないけど」
「……へー、そう」
彼の前世について、まだ何も気づいていないジュリアは、その言葉に少し引いた。
「そんなに面白いもんなのか?」
「まあ、恋愛シミュレーションはドラマチックな展開が多いからね。やってない人からはいろいろと言われたりするけれど、アプグラの監禁エンドだって、初めて見たときはスチルとボイスがあまりに良くて、ちょっとアリかなと思ったし」
「……いや、それはどうかと思うけど……」
呆れながら、彼女は言う。
「俺はやっぱり、狙いすぎだって気がするな。他にないシナリオってのを考えすぎて、外したんじゃね?」
「……あー、それはファンの間でも言われてたね。実を言うと、僕もそんな気はしてた」
笑いながら、クリスが返す。こうして、2人の話は夜遅くまで続いた。




