第27話:フィリクスとシリル(後編)
「そうだ」
シリルはひび割れた声で返した。
「貴族をつぶす。それがオレたちの目的だ」
彼はジロリと、フィリクスをにらむ。
「テメエは自分だけ、生き残るつもりなんだろうがな」
「守る者がいなければ、国はなくなってしまう。そうなれば、お前たちも無事ではすまない」
彼はシリルの敵意を、軽く受け流した。その目の前で、クリスティアンも穏やかに微笑む。
「そうだねえ。隣国にも王がいて、国民がいる。王は統治する者。国民は王に庇護される者。その前提が覆ると、彼らは驚きおびえるだろう。ほうっておけば、自分の国もそうなるのではないかとね」
「……それ、前も聞いたな」
シリルが真剣な顔をする。フィリクスも真顔になって言った。
「ええ。考えもしませんでしたが、確かに警戒されるでしょう」
「他の国が、まとめて攻めてくるかもしれねえ」
「そうですね。ですからクリスに王位を継いで頂いて、私がその補佐をする。そして税の軽減や、貧困の解消に力を入れる……」
「……まあ、それでもいい。テメエらが約束を守らなかったら、そのときはオレが殺してやる。そんだけだ」
2人の会話を聞いて、ジュリアは首をかしげた。彼女はクリスの耳元に口を近づけて、小さな声でささやく。
「なんか難しい話だな。これ、本当にゲームのシナリオと同じなのか?」
「流れは同じだよ。ゲームのほうでは、シリルは同じ平民という立場で苦労している主人公と仲良くなって、彼女の望みを叶えたいと思うようになるんだけどね。僕では同じ手は使えなくて」
彼は彼女と同じくらいの声量で話す。その言葉を聞いて、ジュリアはますます不思議がった。
「なんにもねえとこから、よく引っぱり出してきたな。コイツらが納得するようなこと……」
「え? ……君、元の年齢はいくつ?」
「17だけど」
「じゃあ、高校2年生くらいか。もう習っているんじゃない? 世界史の、フランス革命の後の話」
「……なんだっけ」
勉強が嫌いで、授業も出るだけでまともに聞いていなかった自覚がある孝太は、目をそらしてつぶやいた。
「いやあ……僕もそんなに覚えてないけど。ヨーロッパの国が、自分たちのところまで影響するんじゃないかって、止めようとした話があった気がして」
また、日奈にとっても学生時代は、遠い思い出になっていた。よって、具体的なことは何も口にできず、彼女はふわっと説明する。
「まあ、僕はポウムとは違うから。彼らを説得するには、違うことをやらないと」
フィリクスとシリルは、2人には構わず、机に地図を広げている。それは王宮の地図だった。彼らの話題は、すでに自国のことに移っている。




