第25話:フィリクスとシリル(前編)
「そろそろ、行こうか」
そう言って、クリスティアンが立ち上がる。ジュリアは少し緊張しながら立ち上がった。
「……フィリクス様と、ええと……」
「シリルという男。家名はない。……彼は親に捨てられて、革命軍に拾われたんだ」
話をしながら、クリスは部屋の外に出る。その横に並んで歩きながら、彼女は聞いた。
「革命が失敗する可能性は?」
「あるよ。フィリクスやシリルとのルートなら、彼らの好感度だけ稼げばいいけど……。僕の裏ルートだと、全員の好感度が高くなければ、エンディングにはたどり着けない」
「……何か、こう。好感度を上げるアイテムとか……」
「無いよ」
スパッと切り捨てて、クリスになった日奈はニッコリと笑う。
「大丈夫。そこは僕に任せておいて」
客室が並ぶ棟の片すみ。小さな部屋の前に立って、彼は軽くドアをたたく。
「……はい」
聞き覚えのある声がして、ドアが少し開けられた。
「おや……?」
黒い髪に黒い瞳。丸メガネをかけた青年が、ジュリアの姿を見てつぶやく。
「珍しいお客様ですね」
ひと言で、歓迎されていないことが分かった。話が違うと思いながら、ジュリアは横にいる男を見る。
「あれ、ダメだった?」
その男……クリスは気にした様子もなく、黒髪の男に向かって言う。
「ジュリアは公爵家の人間だ。その力を借りられるというのは、悪い話ではないだろう?」
「……それは」
男が目をそらす。ややあって、彼は2人を部屋に入れた。
「……どうぞ」
「ありがとう、フィリクス」
クリスは微笑んで男……フィリクス・アルドリットを見つめる。彼は深いため息をついた。
「……信じますよ。他でもない、あなたが連れてきたのですから」
「もちろんだよ」
うなずく彼と、その隣でうつむくジュリア。2人をイスに座らせて、フェリクスは部屋の扉を閉めた。
「……ケッ。王子様ってのは、なんでも許されんのかよ」
部屋のすみから声がする。いつからそこにいたのか。フードを被った男が、進み出てきて顔を見せた。
(なるほど、追加キャラ……)
フードの男は、三白眼と鋭い目つきが特徴的なイケメンだ。髪の色も貴族に多い金髪ではなく、暗い紫色をしている。
(アプグラにいる他の男とは、違うタイプのキャラだな)
心の中で納得しながら、ジュリア(孝太)は彼を観察する。その視線を受けて、男は明らかに嫌そうにした。
「……悪かったな、汚くて」
「……あ、いえ、そんな……」
彼女は慌てて首を振る。暗殺者のような格好の男は、はき捨てるような口調で続けた。
「どうだかな」




