第23話:乙女ゲームの攻略法(後編)
「……なんだか難しそうですね」
ジュリアは、ため息をつきながら言葉を発した。クリスティアンは、ウンウンとうなずく。
「そりゃあ隠しルートだからね。でも大丈夫。僕は全部、覚えてるから」
「覚えてるって、選択肢とか?」
「それとイベントが起きる場所だね。例えばフィリクスルートではポウムが彼からクーデターについて聞くんだけど、僕の真ルートでは偶然聞いてしまって、仲間にならなければ殺すって脅されるんだ。今回はそのルートでポウムが偶然いたところに僕が行って、ポウムの代わりに話を聞いた形だね。フィリクスとシリルに会って……」
「待って待って。早ーって」
急な早口に、ジュリア(孝太)は慌てて彼を止めた。
「お前、ほんとにこのゲーム好きなんだな……」
呆れ顔でそう言われて、クリス(日奈)は苦笑を浮かべる。
「ごめん、オタクで」
「別にいいけど、聞いてもわからねえんだよ。もっと簡単に言ってくれ」
その言葉に、クリスは少し考えた。彼の中にいる日奈は、イベントの内容を思い浮かべる。それを短い言葉で伝えようとして、彼女は考えながら言葉を落とした。
「……今日も彼らはここに来ている。僕と話をするために、王宮に泊まっているんだ。話し合いは、いつも深夜に行われる。君はどうする?」
「……どうするって、それは秘密の話し合いだろ。俺がいていいのか?」
「うん。人が1人増えるくらいなら、平気だよ。ただ、ポウムは……」
クリスはそっと、離れた場所にいる小柄な少女の方を見た。クリクリとした大きな目。不安そうに、体を縮めている姿。
「あの子はここに置いていこう。……あまりフィリクスと関わらせたくない」
「それは、あいつが主人公だからか?」
目を細めて、ジュリアは低い声で聞く。
「でも、本来は主人公のイベントなんだろ。原作と違うことをして、大丈夫なのか?」
「……分からない」
クリスのまなざしは揺れていた。彼(彼女)も、絶対の自信があるわけではない。それでも。視線を戻して、彼は続ける。
「……だけどポウムには、パットと結ばれてほしいんだ。それ以外のルートだと、あの子は幸せになれないから」
「……そうか」
ジュリアには、詳しいことは分からない。だが、彼女は彼を信じることにした。その上で。
「お前が決めたんならそれでいい。でもって今日の話し合いには、俺も行く。お前と一緒に戦うって、決めたからな」
クリスを見すえて、ジュリアはハッキリと宣言した。クリスは驚きに目を見開いて、それから笑う。
「君は時々、すごく格好よくなるね。……ありがとう」




