第22話:乙女ゲームの攻略法(中編)
「……1個、聞いていいか?」
「どうぞ」
ジュリア(孝太)は混乱しながらも、クリスの目を見て問いかけた。
「乙女ゲームって、そういうのもアリなのか?」
「使用人と主人の恋愛って、そんなに珍しくないし。他にもあると思うけど」
クリスティアン(日奈)は、不思議そうな顔をした。
「まあ、中でもアプグラはダークなほうだね。良くても監禁、悪いと死亡ルートだから」
「そっか……」
ジュリアは落ち着かない様子で、目線をあちこちに動かした。
「……それで、その。あなたは、お父様とお兄様を、どうするつもりで……?」
「ああ……ちょっと待ってね」
クリスは彼女に近づいて、小さな声でささやいた。
「その話は、外でするべきじゃないと思う。まずはポウムが待つ部屋に戻ろう」
「……分かりました」
ジュリアはうなずいて、歩きだす。クリスは黙って、彼女を支えた。その体は、少し震えている。
(……そうだよね。クーデターって聞いたら、不安になるよ)
そんな彼女から、目を離さずに。彼はポウムを待たせている部屋に戻った。部屋も彼女も来たときと同じで、何も変わった様子はない。
「…誰も来なかった?」
「はい」
ポウムは頭を下げて返す。いつもと同じその様子に安心して、クリスはジュリアを部屋の奥に連れていった。
「……まずは、そうだね。アプグラに続編があるのは知ってる?」
「ええと……あれですよね。ファンが思っていたのと違う……」
前世で姉から聞いたことを、孝太はそのまま口にする。クリスはそれを肯定した。
「そうだね。キャラ崩壊に、ご都合主義のハッピーエンド。物語としては三流だ。……だけど今の僕たちには、それだけが唯一の救いになる。本編のフィリクスENDだと、僕も君も殺されるからね」
「……えっ?」
孝太は耳を疑った。
「そんなこと、あるんですか?」
「だってそれ、僕のルートじゃないし。ルート外で他の攻略対象が死ぬのは、わりとよくあることだしね」
「へ、へえー……。私はてっきり、あなたは何をしても死なないから、余裕なのかと思っていました」
「まさか。僕もメルも、安全じゃないし……。パットなんて、主人公以上によく死ぬからね。注意してって言ったのは、そういうことだよ」
サラリと告げて、彼は微笑む。
「その中で、誰も死なないのがFDの僕のルートだ。僕の気持ちを変えた主人公が、メルを説得して国を変える。婚約破棄をされた君が、修道院に入るとか……そういう細かいところは変えるつもりだけど、僕は基本、このルートを目指している」




