第21話:乙女ゲームの攻略法(前編)
「……それもちょっと、着てみたいです」
ジュリアの中にいる孝太は、クリスティアンの目を見て言った。彼は目を丸くする。
「珍しいね」
その言葉は心の底から出たものだった。彼はジュリアが持つ剣に、手を伸ばしながら続ける。
「でも、そっか。RPGだと、そういう防具もあるからか。……魔法がなくて、ガッカリした?」
「……かなり」
笑いながら話すクリスに、彼女は素直な気持ちで返す。そして剣を手渡した。
「大丈夫だよ。1年もしないうちに、君が好きなことをしても、誰も文句を言わなくなるから」
そう告げて、彼はマイルズに剣を渡しにいく。ジュリアはそっと、目を伏せた。
(クーデターが起こるんだっけ……)
そういえば、と彼は思う。
(どんなイベントが起こるのか、聞いておいたほうがいいよな)
彼女はマイルズと軽い会話を交わしてから、戻ってきた彼に声をかけた。
「私、少し疲れてしまいましたわ。部屋に戻ってもいいかしら」
「もちろんいいよ。ちょうど僕も、マイルズにそう言ってきたところだ」
クリスは笑って、ジュリアの肩に手を回す。そしてそのまま、彼女の体を抱き寄せた。
「それで次は、何がしたいの?」
「えっと……ゲームの話。まだ、イベントについても聞いていないので。それと攻略対象のことも……」
言葉の途中で、彼女はふと気づく。
「そういえば、マイルズさんは攻略できます?」
「無理だよ。彼には妻がいるから」
サラリと答えて、彼は彼女を連れていく。
「子供もいるし、ゲームでも少ししか出てこないキャラだ。だから僕は、彼のことは分からないけど……」
語りつつ、足を進める。彼が向かうのは、ポウムを待たせている客室。
「彼はフィリクスと手を組んでる。だから今は、僕たちの味方だ」
「フィリクスさんは、確か攻略対象でしたよね。他にはどなたが……?」
その質問に、クリスは困った顔をする。
「アプグラのサブタイトル、知ってる?」
「……いえ。パッケージだけなら、見たことがあります。でも書いている文字までは……」
「『Apple∮Gurafa〜グラファ公爵家の光と影』」
日奈はよどみなく、正式なタイトルを口にした。
「メイン攻略対象は4人。隠しキャラは1人。フェリクスはすぐには出てこない。そしてメインになっているのは、ジェイミー公爵とメルヴィン公子、パットと僕だ」
父と兄の名を聞いて、ジュリアは一瞬、思考が止まる。王宮の廊下で立ち止まった彼女の気持ちを察して、クリスティアンは気づかうような視線を向けた。




