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悪役令嬢(男)と攻略対象(女)、理不尽な乙女ゲームの世界を変える  作者: 文字書きA


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第20話:試合

クリスティアンが、両手剣を振り上げる。マイルズは自(みずか)らの剣を横向きにして、振り下ろされた刃(やいば)を受け止めた。金属がぶつかる鈍(にぶ)い音が響(ひび)く。


(……いいなあ)


ジュリアの中にいる孝太(こうた)は、クリスティアンをうらやんだ。マイルズが腕(うで)に力をこめて、相手の剣を押し返す。クリスは剣を握(にぎ)ったまま後ろに飛んで、再び彼と距離をとった。


(やっぱり、本気じゃない)


彼は剣を斜(なな)めにし、上から振り下ろす形で斬(き)りかかった。マイルズはその場から動かず、上体(じょうたい)を屈(かが)めて剣を上げる。

だが、その剣に当たる寸前で。クリスティアンは手首を曲げて、自分の剣の角度を変えた。上向きから横向きに。そしてそのまま、彼は男の首元に剣先を当てる。


「……まいりました」


マイルズが深く息をつくのと同時に、言葉をはきだす。地面に剣を落とした彼を見て、クリスもまた剣を引いた。


「相変わらず、お強いですな」


「お前が手加減(てかげん)しただけだろう。僕に剣を教えたのはお前だ」


「何をおっしゃっているのですか。クリス様は、もう私を越えられておりますよ」


笑顔でそんな会話をして。クリスティアンは剣を片手にさげたまま、ジュリアのほうに近寄った。


「……お疲れさまです」


「ありがとう」


なんと言えばいいかわからず、適当な言葉をかけたジュリアの前に立って。彼は自分の体で、彼女を隠(かく)した。そして小さな声で聞く。


「持ってみる?」


剣の刃先(はさき)を下に向けて、立てた状態で。クリスは柄(つか)の上の方を持ちながら、ジュリアに向けて差しだした。


「……いいんですか?」


「他の皆(みんな)は僕を見てるし、これくらいは大丈夫。……君に剣を教えるのは無理だけど……」


「……それなら、夜に」


小さな声で、彼女はつぶやく。


「2人きりで、もう1度ここに来ませんか。あなたの力があれば、武器庫の鍵(かぎ)も借りられるでしょう?」


クリスは目を丸くした。彼の中にいる日奈(ひな)は、ジュリアの目を見ながら告(つ)げる。


「それは止めたほうがいい。……確かにできないことはないよ。でも、ここでは誰の目があるかわからない。僕は、ゲームの展開から外れるようなことはしたくないんだ」


彼の意見に、孝太は返す言葉もなかった。それは正しいと思ったから。


「……わかりました。今はこれだけで、ガマンします」


ジュリアはそっと手を伸ばして、剣の柄を持つ。それを見て、クリスは剣を手放した。初めて持ってみた剣は、思ったよりは重くなかった。


「……女の力でも、持つだけなら簡単なのですね」


「どちらかというと、装備の方が重いかな。この世界では、フルプレートアーマーがメインだから」


意外そうに話すジュリアを見て、クリスティアンは優しげに微笑む。

いつも読んでくださり、ありがとうございます。

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