第18話:剣術(中編)
「はい! ありがとうございます!」
そう言ったジュリアの笑顔は、とても明るかった。
(……この子って、こんな顔もできるんだ)
意外な気持ちで、日奈は彼女を見つめる。元のクリスティアンは、もったいないことをしていたと思いながら。彼になった彼女は、婚約者の手を取った。
(まあ、ジュリアも転生者だから、前と違うのは当然だけど)
手を繋いだまま、王宮の廊下を歩きながら。彼女は1人、考える。
(14才か。……若いなぁ)
Apple∮Gurafaは直接的な性表現こそないが、過激な話も含まれるため、大人向けだとされていた。
ゲームの対象年齢を示すCEROという数値も、CかD。そして、この手のゲームにはありがちなことだが、登場人物の年齢は設定されていない。服装も中世のドレスやコートなどを元にした、ファンタジーではよくあるものだ。
(ジュリアの見た目は子供には見えないし、イラスト描いた人だって、大人だと思ってデザインしてたはずなのよね。ただ、元になった世界観が中世ヨーロッパだから、そっちに引っぱられただけでしょ。まあ、私にとってはそのほうが良かったけど)
日奈の年齢は30才。元となる少年の2倍以上だ。だから彼(彼女)の中では、クリスティアンとしての記憶より、日奈としての記憶の方が多くて強い。
(多分この子は、もっと若い)
彼女が乗っていた宮易線は、通勤や通学で使われる路線だ。時間は少し早めだったが、それでも部活動の生徒らしき子供はいた。そのうちの1人だったと考えれば、違和感はない。
(女の子なのに剣を振りたいと思うのも、スポーツをやってたからかな)
そう思いながら、クリスは後ろに視線を向ける。ワクワクとした顔でついてきていたジュリアは、その顔を見て首をかしげた。
「……あの、何か?」
「……いや、単に気になっただけなんだけど」
彼は声をひそめて返す。
「君は部活とか入ってたの? もしかして、剣道部?」
「ああ……いや、サッカーです。でも、やってみたくて」
問いかけに、彼女の中にいる孝太は笑って答える。
「別に、いきなり試合したいとまでは言わないんで。ただ、ほら……そういうの、憧れてたんで。あなたにも、分かってもらえると思うんですが」
「確かに。僕もこの体になってからは、運動するのが楽しくなったな。体力も筋力もあるし、技術は体が覚えてるし」
「……あー。そういう意味だと、俺は前と同じだと思ってやると苦労するかもっすね。気をつけます」
自然な会話。その途中で、日奈はジュリアの一人称に引っかかる。だが、そのことを聞き返す前に。2人は訓練場についた。




