第17話:剣術(前編)
ガタゴトと、車輪の回る音がする。
「クリス様。王宮についたら、2人きりになりたいのですが」
馬車の中で、ジュリアは彼に話しかけた。クリスティアンは、考えながら答える。
「それはいいけど……。……その場合、ポウムには客室にいてもらわないと」
「そんなことは当然ですわ。あそこは本来、庶民が入れるような場所ではありませんもの。ポウムも分かっているでしょう?」
彼の中にいる日奈は、王宮に来た主人公が起こすイベントのことを気にしていた。その心のうちを察して、ジュリアはポウムに言葉をかける。何も知らない少女は、真剣な顔でうなずいた。
「はい。部屋から出なければいいんですね」
「そうだね、それと。もし部屋から出て、誰かと会ったら報告すること。口止めされても気にしなくていいから」
「分かりました」
と、そんな会話を交わすうちに。馬車は王宮に到着した。広い城の中を、クリスは迷わず進む。そして彼は空いた客室に、ジュリアとポウムを案内した。
「……いいところですね」
ジュリアは室内を見て、思ったことを口に出す。客室の家具は、見るからに高価な物ではあったが、公爵家のように全て金で作られているということはなかった。
「……はは、ありがとう。それじゃあポウムは、ここで待ってて」
クリスはジュリアの言葉を聞いて、笑みを深める。そして彼は、ポウムだけを部屋に残して、ジュリアを外に連れだした。
「……それで君は、何がしたいの?」
ひそめた声でクリスが聞く。ジュリアは彼の耳に自分の口を近づけて、小さな声でささやいた。
「実は、剣を振るってみたいんだけど」
その言葉に、クリスは目を見開く。そして少しの沈黙の後に、彼は続けた。
「儀式用の細い剣なら、すぐに用意できるけど。日本でいう、レイピアだね。それ以外は、武器庫か訓練場に行かないと手に入らないよ」
「訓練場……!」
ジュリア(孝太)は目を輝かせた。その様子を見て、クリスは困り顔になる。
「君を連れていくと、目立ってウワサになってしまう。僕に無理やりついてきたという形で、ちゃんと演技してくれるならいいけど」
「やります! がんばります! なんで、お願いします!!」
孝太は前世の習慣で、バッと音がするほど勢いよく、彼に向かって頭を下げた。クリスは慌てて、彼女を止める。
「待って待って。だからそういうの止めてって……」
ジュリアの肩に片手を置いて、軽く身をかがめながら。彼は少し、早口で言った。
「顔を上げて。僕はできる範囲で、君の望みを叶えてあげたい。だから君も、協力して」




