第14話:話は変わるが(後編)
(バカみてえだ)
ジュリアの中にいる孝太は思う。
(グチャグチャ気にして、進めなくなって。こいつはずっと、俺と向き合ってくれてたのに)
彼女の前にいるクリスティアン(日奈)は、優しく穏やかな笑みを浮かべて、ジュリアを見ていた。部屋の扉が開いて、メイドがお茶を持ってくる。
「ごゆっくり、お過ごしください」
陶器のカップとポットを机の上に置いて、メイドはすぐに部屋から出ていく。クリスはジュリアの手を離して、ポットの中のお茶を、空のカップに注いだ。濃い赤茶色の液体から、湯気がたつ。
「どうぞ」
「……ありがとうございます」
カップを受け取って、揺れる水面を見ながら。ジュリアは目を伏せてつぶやいた。
「それで、私がすべきこととは……? ポウムやパットに、特別な地位を与えてはならないのですよね?」
「そうだね。ただ、パットはともかく。君がポウムに関わらないと、それはそれですぐ死ぬから……。1番いいのは、公爵に頼んで彼女を部屋つきにしてもらうことかな。その後は、買い物や掃除を言いつけて、できるだけ休ませずに働かせ続けてくれ」
「……少し気が咎めますが」
ジュリアは沈んだ声で言う。クリスも同じ気持ちだった。
「ポウムはいい子だからね。でも、他の使用人たちから疎まれないためには、その方がいいんだ。ワガママな主人に目をつけられて、苦労しているように見えるから」
「ワガママな……」
ジュリアは今までのことを思い返してみた。部屋つきになったメイドに、あれこれと注文をつけて困らせていた、子供のころのことを。
「……ちょっと、というか。かなりやり過ぎていませんか?」
「そう思うのは、僕たちが転生者だからだよ。この国ではそれが普通なんだ」
「それは不満もたまりますわね……」
しみじみと言って、ジュリアはカップを持ち上げた。そのまま彼女は、温かいお茶に口をつける。香りが良く、少し苦いハーブティーは、飲むと体がポカポカした。お茶を飲みながら、彼女は気になっていたことを聞く。
「……クーデターを起こされて、あなたは困らないのですか」
「僕も、元の僕とは違うからね」
ニコニコと笑って、クリスは告げる。
「この国は変わるべきだと思う。フィリクスはまともな考えを持ったやつだよ。ただちょっと、趣味が悪いだけだ」
「なるほど」
話を聞いて、ジュリアも笑う。彼はどうやら、ひどい人間ではないようだと思いながら。穏やかな声で、彼女は続けた。
「では、そのように。お茶を飲み終えたら、私たちも休みましょう」
1/気が咎める
「うしろめたい気持ちがする。やましさを感じる」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




