第13話:話は変わるが(中編)
(……カッコいい)
決意に満ちた、ジュリア(孝太)の真剣な表情に。クリスティアン(日奈)は思わず、見とれてしまった。
「……クリス様?」
黙ったまま動かない彼を見て、彼女は首をかしげる。その声に、クリスはハッとした顔で答えた。
「あ、いや……。ちょっと、ビックリしたんだ。もちろん、君の気持ちは嬉しいよ。ゲームの話もしたいけど……。夜も遅いし、今日は休もう」
「嫌です」
ジュリアは引かなかった。
「今夜は家に泊まるのでしょう? もう少し、あなたの話を聞かせてください」
「……分かったよ」
最終的に、折れたのはクリスの方だった。彼はベルを鳴らして、メイドを呼ぶ。
「ご用でしょうか」
やってきたのは、ポウムではなかった。だが、クリスは気落ちした様子もなく、指示を出す。
「寝る前に飲む、ハーブティーを用意してくれ。彼女と2人だけで、眠くなるまで話したいんだ」
「かしこまりました」
彼に呼ばれて来たメイドは、深々と頭を下げる。そしてお茶を用意するために、その場から離れた。クリスはメイドがいなくなるまで待ってから、小さな声でつぶやく。
「……君の家に、パットっていう名前の使用人がいるの、覚えてる?」
「いえ、まったく」
ジュリアは彼の横顔を見ながら言う。彼女は使用人の名前など、どうでも良いと思っていた。前世で姉から聞いた記憶もない。
「まあ、そうだよね」
クリスは彼女の方に視線を向けて、苦笑を浮かべる。
「パットは優しい、いい子なんだ。地味で目立たないんだけど、僕はポウムには、あの子がふさわしいと思う」
「……彼女はあなたの推しなのでは?」
「だからこそだよ。ポウムには幸せになってほしい。このゲーム、問題のある男しかいないからね。パット以外は信用できない」
不思議そうなジュリアに向かって、クリスは真顔で告げる。彼女はじっと、彼の目を見た。
「自分の手で、幸せにしようとは思わないのですか」
「僕には君がいるからね」
切り裂くような厳しい言葉に、クリスは迷わず言い返す。そして彼は、彼女の手を握った。
「君は、王妃になるために努力してきた。小さなころから、親に決められた道を歩くだけの人形として育てられて。……今の君がどう思っているのかは知らないが、僕は君に、自分の人生を生きてほしいんだ」
柔らかなまなざしを向けられて、ジュリアは目を丸くした。彼は最初から、彼女のことを誰よりもよく知っていて。婚約を続けたいというのも、きっと自分のためではなく、彼女を守るための提案なのだろう。




