第12話:話は変わるが(前編)
「……あの、クリス様」
「うん?」
「クーデター、というのは……?」
少し考えてから。ジュリア(孝太)は1番気になっていたことを聞いた。クリスティアン(日奈)は笑顔のまま、口を開く。
「この国の民が、追いつめられていることは知ってる?」
「ええ、まあ。税金が重くて、働いても生活が楽にならないのですよね?」
「そう。だから王家を倒して、生活を変えようとする人々がいるんだ。彼らは革命軍と呼ばれる。トップにいるのはシリルという男だ。彼は……」
「……その話、長くなります?」
ジュリアは彼の言葉を遮って聞く。クリスティアンは苦笑を浮かべた。
「……まあ、細かいことは置いておこうか。ともかく、色々あってシリルはフィリクスに出会った。彼のことは知っているね?」
「ええ。パーティーで、何度かお会いしたことがありますから」
メガネをかけた黒髪の青年の顔を思い浮かべて、ジュリアがうなずく。
無口で人付き合いもあまり良くなく、何を考えているのか分からないと言われて遠巻きにされていた男。もっともその美しさから、令嬢たちの中では評判が良かった。
そこまで思いだして、彼女は首をかしげる。
「でも、あのかたはあまり目立たない人だったような気がしますが……」
「それは表向きの顔。裏の彼は野心家で、王家の転覆を狙っているんだ」
クリスはまた、サラッととんでもないことを告げた。すでに覚悟を決めていたジュリアは、その言葉を受け止めてなんとか飲みこむ。
「……は、はあ……なるほど。……でも、そんなかたとどうやって仲良くなられたのです?」
「ああ、それは……仲良くなったというよりも、手を組んだというべきかな。彼は別に、僕を信用しているわけじゃない。僕としても、まだ彼に全てを打ち明けることはできないと思っているよ」
「……それは逆に危険なのでは?」
「平気だよ。僕は彼の目的を知っているし、今も少しずつ、歩み寄ってるところだから」
ジュリアの問いに、クリスは笑みを浮かべて答える。その顔は自信に満ちあふれていた。
「僕はこのゲームをやりこんだからね。任せてくれれば、うまくやるよ」
「……そうですね。そこは頼りにしています。その上で。私も、あなたと共に戦いたい」
そしてジュリアも。真剣な表情で、彼に向かって訴えかける。
「私は、ゲームのことは知りません。でも、だからといって。あなたに全て押しつけて、自分だけ楽をするのはおかしい。……できることがないというのなら諦めます。だけど、そんなことはないでしょう? 私は、仮にも公爵令嬢です」
クリスとジュリアの視線がぶつかる。しばらくの間、2人はそのまま動かなかった。




