第11話:なにそれ知らない(後編)
「なんの騒ぎだ?」
ジュリアの大声を聞いたことで、部屋の外に人が集まってくる。その先頭に立った人物。派手な装飾だらけの服を着た男が、部屋の扉を開けて聞く。
「……あ」
その声を聞いて、ジュリアは固まる。彼はジェイミー・グラファ。公爵家の当主であり、彼女の実の父親だった。
「ジュリアに頼まれていたアクセサリーに使う宝石が、盗まれたんですよ。ほら、この前街道に盗賊が出たでしょう?」
どうするべきか分からない。そんなジュリアとは違って、クリスティアンはあくまでも穏やかなまま、公爵に向かって告げた。彼の言葉を聞いた男は、納得したような顔で頷く。
「……ああ、そうだったな。大丈夫だ、ジュリア。彼らは隣国で捕まったそうだから、お前の宝石もすぐに戻ってくるだろう」
「おや、そうだったんですね。僕はその話を聞いていなくて……」
「はは、殿下に報告するようなことではないと思っておりましたからな。まさか、娘のことであなたがそこまで気にしてくださっているとは……。ですが、非常にありがたいことです。これからも、娘と仲良くしてください」
そんな会話の後に、彼は部屋の扉を閉めた。外に集まっていた人々が散らばっていく、足音が聞こえる。それもなくなり、完全に静かになった後で。
「……大丈夫?」
クリス(日奈)はニッコリと笑って、立ち続けているジュリア(孝太)を見た。彼女はドサリと、イスに沈みこんで息をはく。
「……た、助かったぁ……」
イスの背もたれに寄りかかって、ジュリアは掠れた声でつぶやく。クリスは目を伏せて、言葉を続けた。
「ごめんね、ジュリア。前世のことを思い出したばかりの君に、こんな話をするべきじゃなかった。……今日はこれで、失礼するよ」
言いながら、彼は椅子から立とうとする。ジュリアは思わずその手を掴んだ。
「ま、待って……もう少し、ここにいてください」
クリスは黙って座りなおす。彼のまなざしは、優しかった。
(……本当に、見た目だけは完璧だよな。……多分、今は。中身もそんなに、悪くないと思いてえけど)
その目を見ながら、孝太は思う。ジュリアは今、12才だ。現代の日本では、まだ子供。だがこの世界では、もう結婚できる年齢だとされている。
(こいつはどう思ってるんだろうな)
クリスティアンの年齢は、ジュリアより2つ上の14才。現代の感覚で考えると、中学2年生くらいだ。中学生と小学生の結婚と聞けば、まともな人間なら止める。クリスの中身が日本人なら、そこをどう考えているのか。孝太はそれが気になっていた。




