第132話:話し合い(中編)
木の板を置いて、シリルはそこにハムの塊を置く。彼は銀色のナイフを抜いて、ハムを数枚、切り取った。そしてそれを、切りこみを入れたパンに挟む。
「そら、メシだ」
シリルがクリスにパンを渡した。彼は水さしから、小さなコップに水をそそぐ。
「ありがとう」
クリスは特に文句も言わず、パンを受け取ってかじりついた。塩だけで味付けされたハムと固いパンでも、お腹がすいているとありがたく感じる。コップの水を飲みながらパンを食べ終えて、彼は少し照れくさそうな顔をした。
「……おかわり、していい?」
「好きなだけ食え」
シリルはそう言って、同じパンを作って渡す。黙ってパンを受け取るクリスに、彼は優しげなまなざしを向けた。
「お前は本当に変わらないな」
質素な食事にも文句を言わない、どころか、むしろ喜んで食べている。そんな彼を見て、シリルは少し安心した。
「……そうだ、ジュリア。君も何か、口に入れたほうがいいよ」
クリスは3つめのパンを受け取って、彼女のほうを振り向いた。ジュリアは優雅に微笑んで返す。
「ありがとうございます。でも、まずはあなたがお先に食べて。私はその後でよろしいから」
水さしの中身は、もうほとんど無くなっている。シリルは懐から水が入った革袋をだして、水さしの中に中身を移した。
「ありがとう」
クリスティアンは、お礼の言葉を彼に伝える。袋の中に詰まっていた水には、臭いが少し移っていた。
(まあ、しかたないよね)
この世界には、ペットボトルは存在しない。水を持ち歩くには、動物の皮を縫いあわせた袋を使うしかなかった。彼はそれを知っていたから、何も言わずにコップを持つ。
「……しかし、フィリクス様。これからどうなさるおつもりですか」
その姿を見つめながら、ずっと黙っていたマイルズが、小さな声で問いかける。彼は真顔で言葉を続けた。
「国葬を執り行うには、今は問題が多すぎます。陛下が亡くなられたことで、王宮は混乱し、まとめてくださるかたを待っている。しかしクリスティアン様は、メルヴィン公子とのこともあり、前に出てくることができない」
淡々と語る男を見て、フィリクスが目を細める。クリスティアンは口の中のものを飲みこんで、真顔になった。
「ずっと閉じこもることは不可能だ。下手をすれば、僕まで死んだと思われてしまう。……お父様が亡くなられたのは、具体的にはいつごろなの?」
「2日前です」
顔色を変えず、マイルズが答える。ジュリアは目を見開いた。
「式の前に……?! そのことは、皆さまにも伝わっているのでしょうか」




