第130話:対処法
「……私は、何をすればよろしいの?」
クリスティアンに近づいて、ジュリアは小さな声で聞いた。シリルが横目で彼女を見る。
「オレやあんたに、やるべきことは何もない。国王を殺したのが、本当にあの男だったとしても。その罪を明らかにするのは、クリスティアン様の仕事だ」
「では、どうやってお兄様に問いただすのです?」
「さあな。そんなもん、オレがわかるわけあるか。そういうことはフィリクスに聞け」
彼は淡々とした声で告げる。そばにいたフィリクスが、その言葉を聞いて頭を下げた。
「……あくまで私の考えですが、お話してもよろしいでしょうか」
「ああ。ぜひ、聞かせてくれ」
クリスがうなずく。フィリクスは、彼の言葉を受けて続けた。
「陛下が亡くなられてしまったことで、国は今、揺らいでおります。この状況は、公子も予測できたはず。あのかたは、特に理由もなく混乱を引き起こすような人ではありません」
そこで言葉を切って、彼は苦い顔をした。
「玉座を手に入れたいのなら、ジュリア様に子ができるまで待てば良い。今、陛下を暗殺する理由は……」
フィリクスが目線を上に向ける。彼は言いづらそうにしていた。
「私にも、心当たりはありません」
その目はクリスに向けられている。シリルが真顔になった。
「……ヤツはクリスティアン様に会いたいんじゃないか。そうとう執着していたからな」
冷たい声が、室内に響く。マイルズはゆっくりと顔を上げた。
「グラファ家は、長年王家に仕えてきたはず。なぜ、そのような話が出るのです?」
ジュリアとクリスは、渋い表情で目をそらした。そばでシリルがため息をつく。
「……メルヴィンはクリス様の友人だ。だが、ヤツはそれだけでは満足していないんだろう。クリス様も、わかるはずだ」
「……ああ、わかるよ」
彼の言葉を受け止めて、クリスはグッと手を握った。
「だけど、いや、だからこそ。僕は彼と向き合わねばならない。……僕がお父様の葬儀に出れば、メルは必ず声をかけてくるだろう。マイルズとシリルをそばに置けば、僕が殺される心配もない」
ジュリアがクリスのほうを見た。彼の顔色は青ざめている。
「了解しました」
シンとした室内で、フィリクスだけが普段どおりの、変わらない態度を見せていた。彼は薄笑いを浮かべている。
「メルヴィン様と、戦いましょう。……私はあなたの味方となります」
クリスは何も言わなかった。その表情を見ればわかる。彼は納得していない。
(だが、それは口にするべきじゃない。そんなことは、こいつも理解しているんだろうな)
ジュリアは1人、黙ってクリスを見つめていた。自分の兄が、何を考えていたとしても。彼に逆らって、彼女はクリスティアンを守ると誓う。
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