第125話:フィリクスの変化(後編)
ジュリアとシリルが、同時に言う。
「またか」
「またですか」
2人はクリスにジト目を向けた。フィリクスが薄い笑みを浮かべる。
「しかたがないと思いますよ。彼には自覚がないのですから」
「……いや、あの。僕だって、これでも気をつけているんだけど」
クリスは思わず言い返した。ジュリアが彼に、冷ややかな目を向けてくる。
「あなたの言葉は、まったく当てになりません」
そこで、言葉を切って。彼女は表情を和らげる。
「……ですが、まあ。こればかりは、フィリクス様のおっしゃるとおりですね。私たちも、あなたに変わってほしいわけではありませんから」
クリスは何と言えばいいのか分からなくて、黙っていた。シリルが横でうなずいている。
「ああ。お前はもう、そのままでいい。オレたちで、守ってやる」
意気投合した2人を見て、フィリクスはクスクスと笑いだす。彼はヒザをついたまま、クリスを見上げて微笑みかけた。
「私も協力いたします。あなたの望みを叶えましょう」
「…………ありがとう」
クリスは小さな声でつぶやく。そして彼は、フィリクスに向かって手を伸ばした。
「色々と、思うところはあるけれど。君が手を貸してくれるなら、助かるよ」
ジュリアが深いため息をつく。シリルも冷ややかな目をしていたが、どちらも何も言わなかった。フィリクスは、彼の手を取って立ち上がる。
「それで、私は何をすればよろしいのです?」
「ああ、それは……」
クリスはゆっくりと、これまでのことを話し始めた。転生者だということは伏せて。
「……この国は、間違えたまま進んでいる。僕はそれを変えたいんだ」
やがて彼は話を終える。フィリクスは難しい顔をして、考えこんでいた。
「……あなた1人では、不可能でしょうね」
やがて彼は、そう言って。クリスの目を、真正面から見すえる。
「この国の貴族はみな、権力の上にあぐらをかいているような者ばかりです。例外はない」
「けど、お前は勝算があるんだろ?」
シリルが声を上げる。フィリクスの表情は変わらなかった。
「確かに私は、彼らの協力を取りつけた。しかしそれは、クリスティアン様を次の王とするところまでです。……まだ、平民の権利を認めることは、断られ続けている」
「まあ、だろうな。ヤツらは恐ろしいんだ。今まで、自分たちがしてきたことを思うと」
軽蔑をこめて、はき捨てる。そしてシリルは、クリスのほうに目を向けた。
「すぐには変わらねえ。貴族の考えも、オレたちの立場も。だからお前は、生きて戦え。それが責任を持つってことだ」




