第124話:フィリクスの変化(中編)
「どこに行っていたんですか」
戻ってくるなり、3人は真顔のフィリクスに捕まった。彼は3人を空き部屋に連れていき、腕組みをしてため息をつく。
「……あまり動き回らないでください。あなたは今、危険な立場にいるんですから」
「いや、でも……ちょっと外に出ただけだよ?」
クリスが困り顔になる。その後で、彼の横にいた2人が交互に口を開いた。
「問題はない。兄さんは、保護した使用人の安全を確かめただけだ。今後はない」
「ええ。あの子たちも、元気になったら向こうから来ると言っていましたもの。もう行かなくて良いと思いますわ」
クリスティアンが目を見開く。フィリクスは彼に、冷ややかな視線を向けた。
「本当に、何も理解していないんですね。あなたがいくら、身を守る技術に長けているといっても、1人では限界があるでしょう。彼らはそれを知っている。……私も今、あなたに死なれては困るのですよ」
そこで彼は、フッと笑う。
「お前には、王としての素質がある。それは私にはないものだ。……認めよう」
クリスの前で、フィリクスがゆっくりと片ヒザをつく。彼はそのまま、胸に手を当てて頭を下げた。それは最も正式な、臣下の礼だ。
「我が力、我が命。すべて殿下に捧げます。私の王は、あなただけだ」
クリスティアンは、時間が止まったような錯覚を覚える。そんなイベントはない。それどころか、彼はそんなことを言うようなキャラクターではなかった。
「……どうして」
だからつい、言ってしまった。
「君は、お父さんを見返したかっただけだろう? 1人でも立てると証明して。それなのになぜ、僕にそこまでしてくれるの?」
「……そういうところですよ」
視線を下に向けたまま、フィリクスは穏やかな笑みを浮かべる。
「確かに私は、今でも父を許せません。孤独と絶望こそが、私自身の生きる理由になっていた。それは一生、捨てられない。ですが、クリス様。……本当は、私も誰かに愛されたかったのです」
そこで彼は、やっと気づく。先ほどの問いは、主人公が彼に向けた言葉と同じだったと。
(……いや、あれ? もしかしてだけど、ポウムよりすごいことをしたかも……)
フィリクスは秘密主義な人間だ。特に自分の生まれについては、厳重に隠している。ポウムとのイベントはあくまでも、秘密を共有された後に起こるものだ。それを先に知っていたということは、彼には大きな衝撃になる。
「……しかし、どこからそんな話を仕入れてきたのか……。本当に、あなたは侮れないかたですね」
そして。秘密を見抜かれた驚きに、欲しかった言葉をかけられた喜びが合わさって。フィリクスはますます、クリスティアンに惚れこんだ。




