第119話:後始末
(見事なものだ)
神殿に転がる男たちを見て、フィリクスは軽く拍手した。クリスティアンには、傷1つない。周りからも、パラパラと拍手が上がりだす。
「素晴らしい……!」
「さすが、次代の王は違いますな!」
怯えていた参列者たちは、クリスがまたたく間に男たちを制圧したことで落ち着き、彼をたたえる声を上げる。フィリクスは目を細めて、柱の影から姿を見せた。
「……ノーランド侯子」
剣を下ろして、クリスがつぶやく。彼はチラリと後ろを見た。そこには、背中から血を流して倒れている男がいる。
「医者を手配していただけますか」
「……おや。あなた様には、見たところケガなどないようですが……。ジュリア様に、何かありましたかな?」
「いえ、私は無事です。クリス様がおっしゃっているのは、あの刺客のことで……」
ジュリアは男のほうを見た。フィリクスが目をみはる。
「……自分を殺そうとしてきた男のことを、助けようとなさるとは……。さすがはクリスティアン様です」
彼は胸に手を当てて、深々と頭を下げる。その後に、手を上げて使用人を呼んだ。
「すぐに医者を呼びなさい」
使用人が外に向かう。クリスは目を細めて言った。
「……それも演技か」
「さて、何のことでしょう」
フィリクスは不気味な笑みを浮かべる。ジュリアがクリスの顔を見上げた。
「……どういうことです?」
小さな声で、彼女は聞く。彼は同じくらいの声量で返した。
「フィリクスにとって、僕が優秀であることは、とても都合がいいことなんだよ。彼は僕を、王にしようとしているから」
「ああ、なるほど……」
ジュリアは納得し、周囲を見た。遠巻きに拍手をするだけの貴族たち。尻もちをついたままの神父と、彼のそばで立ちつくす従者。そして気絶させた男たちを、1人ずつ縛りあげていくシリル。
「……でも、それも必要なことですよね? あなたの望みを叶えるために」
クリスがうなずく。ジュリアは彼に寄り添って、優雅に笑った。
「いいではありませんか。あなたが理想的な王として立てば、貴族たちはきっと、あなたに従ってくれるでしょう?」
微笑むジュリアの表情は、悪役令嬢らしいもの。その顔を見て、クリスは意識を切りかえた。
「……ああ、そうだね」
彼女を抱く腕に力をこめて、彼はスッと前を向く。どうせ利用されるのなら、全力で乗ってやろうと。
「……聞け! 我が名はクリスティアン・ノーランド! ノーランド国、第23代国王の子にして、24代目の王となる者である!!」
胸を張って、神殿の外まで聞こえるほどの大きな声で。クリスは堂々と宣言した。




