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悪役令嬢(男)と攻略対象(女)、理不尽な乙女ゲームの世界を変える  作者: 文字書きA


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102/118

第102話:裏を知る(前編)

森から出て、街道(かいどう)のすみを歩き、彼らは街の中に入る。クリスは門番に男たちを引き渡して、王宮に戻った。


「……さて」


客室に入り、ドアを閉めて、クリスはシリルのぼうを見る。


「僕たちには、生まれる前の記憶があるんだ」


「そうか」


彼は、特に反応しなかった。驚いたのは、むしろクリスたちのほうだ。


「……知ってたの?」


「いや、何かあるとは思っていたが、まさかこれが2度目の人生だとは思わなかった」


兄の質問にサラリと答えて、彼は笑う。


「だけど教えてもらえて良かった。兄さんがなんでも知っているのは、1度すべてを見たからなんだな」


「……いや、その」


クリスは口ごもりながら話した。ここが乙女ゲームの世界であること。自分がオタクだったこと。全員を幸せにしたいこと。


「……だから君のことも知ってた。今まで隠(かく)していてゴメン」


頭を下げて、体を縮(ちぢ)める彼を見て、シリルは目を細めた。そろそろと、彼はクリスに手を伸ばす。


「何をしているんですか?」


ジュリアはその手を掴(つか)んで止めた。クリスがゆっくりと顔を上げる。彼女は気にせず、質問を続けた。


「……ねえ、シリル。あなたの愛は、家族としてのものですよね?」


「……姉さん」


シリルはニヤリと笑ってみせる。


「まだ分かっていないんですか。オレにはよくわかりませんが、乙女ゲームとは、女性向けに創作されている物なのでしょう。それを楽しんでいるということは、兄さんの心は、女性に寄っているんですよ」


部屋の中が静まりかえった。クリスはオロオロと、2人を見る。


「ど、どうしたの。僕……ううん、私は確かに女の子だったけど、今は男になってるんだよ?」


「…………は?」


ジュリアの思考が完全に止まった。言われたことが理解できない。そんな彼女に、シリルはバカにしたような笑みを向ける。


「なんだ、秘密を共有していたのに、そこには気づいていなかったのか。兄さんも可哀想に。女としての自分を抑(おさ)えて、演技するのは辛(つら)かっただろう?」


「それは違うよ」


クリスが慌(あわ)てて口を挟(はさ)む。彼は固まったままのジュリアを見つめた。


「演技は最初だけだった。彼女にも、君にも。僕は今、本当の気持ちを伝えている。……ゲームとは違う展開になることもあるから」


穏やかな声。困ったように、笑う彼。その奥に、小さな女の子が重なって見えたような気がして。シリルとジュリアは、息を飲む。


「だから、シリルもそんなことを言わないで。僕はジュリアに、僕自身の思いを伝えていたつもりだから。……お願いだ。君のことを、嫌いになりたくないんだよ」

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