第101話:外出イベント(後編)
「……兄さん!」
気をそらした彼に、1人の男が刃を向ける。別の男を締め落とそうとしていたクリスは、とっさのことで動けない。
「……っ!」
ジュリアはサッと、男とクリスの間に割りこんだ。その肩に、ナイフが刺さりそうになる。クリスは彼女の首に片方の腕を回して、自分のほうに引き寄せつつ、反対側の手で男を殴り飛ばした。
「グッ……!」
男が体勢を立て直そうとする。シリルは彼に向かってナイフを投げた。ナイフは男の首すじに刺さり、彼は倒れる。そこでようやく、戦闘は終わった。
「……どうします?」
気絶した男たちを見下ろして、ジュリアがつぶやく。クリスは彼女を抱き寄せたまま、低い声で返した。
「まずは捕らえて、依頼者のことを聞きだそう」
「ああ、そうだな」
シリルがロープを取りだして、男たちを縛りあげる。彼は川から水をくんできて、リーダーらしき男にかけた。
「おい、起きろ」
うめき声を上げて、男はゆっくりと目を開ける。
「……く、う……」
「キサマを雇ったのは誰だ?」
男のノドにナイフの刃先を突きつけながら、シリルは冷ややかな声をだす。男は黙って目をそらした。
「サッサと言え。そうすれば、命だけは助けてやる」
シリルはナイフを少しだけ押しこんだ。男の首に傷がついて、赤い血液が流れだす。男は一瞬、口を開きかけてやめた。その姿を見て、クリスが目を細める。
「……グラファ公爵家」
男の肩がビクリと動く。彼の目線が、クリスのほうに向けられた。
「反応したということは、図星だね」
男が唇を噛んでうつむく。クリスはため息をついて言った。
「……まあ、予想はついていたよ。雇い主は僕たちのように、顔を隠していたのだろう」
「あんたは……」
男の声が震えている。彼はどこかで気づいたのだろう。目の前にいるのが、『誰』なのか。
「……知りすぎたな」
シリルがナイフを握りなおす。男は慌てた。
「ま、待て! 俺は誰にも話さない!!」
「今、少し脅されただけで揺らいだだろう。カマかけにも簡単に引っかかるし……。残念だけど、信じることはできないな」
クリスが苦笑しながら続ける。男が青ざめて、口を閉ざした。
「……大丈夫。命までは取らないよ」
シリルが他の男たちを起こしていく。そして彼は、体に縄を巻いたまま、彼らを立ち上がらせた。
「とっとと歩け。お前らはこれから、牢屋に入ることになるんだ」
急かされるままに、男たちは前に進む。ジュリアとクリスは、少し距離を開けて後ろからついていった。




