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悪役令嬢(男)と攻略対象(女)、理不尽な乙女ゲームの世界を変える  作者: 文字書きA


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第100話:外出イベント(中編)

「……はい、兄さん」


シリルがペコリと頭を下げる。クリスはホッと、息をはいた。


「ありがとう。約束だよ」


彼はシリルの手を引いて走りだす。ジュリアも同時に駆(か)けだした。遠ざかっていたポウムたちの姿が、少し近づく。2人は街の外にある森に、手をつないだまま入っていった。


「……行こう」


クリスは迷わず2人を追う。顔にかかる草木をどけながら、ツルを踏(ふ)みこえて進む途中(とちゅう)で、別の方向から草をかき分ける音が聞こえた。


「誰だ?」


シリルが懐(ふところ)から短剣を出す。クリスも腰(こし)の剣に手をそえた。茂(しげ)みに隠(かく)れて、3人は身をかがめる。フードをかぶった男たちが、彼らの目の前をよこぎった。


「盗賊……ではないな。どこかの家に雇(やと)われているのか?」


「……さあ。分からないな」


クリスが気まずそうに目をそらす。ジュリアは小声で問いかけた。


「知らないんですか?」


「うん。……本来の雇い主はここにいるから」


さらに声をひそめて、彼が返す。ジュリアはそっと横を見た。シリルは不満そうな顔で、コソコソと話す2人を見ている。


(なるほど、ゲームだとこいつが雇うのか)


そう思ったときだった。


「……違うからね?」


クリスが言いにくそうにしながら続ける。


「君、自分が悪役なの忘れてるでしょ」


「……あ」


言われてみればそうだった。ジュリアは目を見開いて固まる。


「何の話だ」


シリルはトゲトゲしい声で聞いた。クリスはスッと、真顔になる。


「ここでは言えない」


ポウムとパットは、森の奥にある花畑の真ん中で座って、お互いのために花の冠(かんむり)を編(あ)み始める。フードの男たちは、その背に向かってナイフを掲(かか)げた。


「……ふっ」


クリスはすばやく、1人の男の背後を取る。彼は男が振り返る前に、その首すじに手刀(しゅとう)を入れて気絶させた。


「なんだ……?!」


男たちが色めきたつ。シリルはそのうちの1人に足ばらいをかけて、倒(たお)れた彼の手を縛(しば)った。


「誰だ、お前ら……!」


草むらがガサガサと音を立てて動く。男の声が森に響(ひび)いた。


「な、なに……?」


ポウムが怯(おび)えて手を止める。パットは彼女を抱き寄せた。草むらの中から聞こえていた音は、しばらくしてやむ。パットは静かになった茂みを見つめて、低い声をだした。


「……まずはここから離れよう」


彼の腕の中で、ポウムはコクリとうなずいた。2人はゆっくり立ち上がり、音がしたのとは反対の方向にある、動物が通った道から出ていく。茂みの向こうから、クリスはコッソリと、その姿を見送っていた。


(……良かった。これでこのイベントは、なんとかなった……)

いつも読んでくださり、ありがとうございます。

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