第62話 ハローウィン?(中原)
「ねえ佐々木」
「なんだ、中原」
「もうすぐハローウィンじゃん」
「そうだなー。店のハローウィンの飾りつけ大変だったな」
「わたしの学校、ハローウィンはお化けの格好をしてパーティーをやるんだ」
「マジ。さすがお嬢様学校だな」
「今年は土曜日でよかったよ。わたしは、都合が悪いって言って、パスしちゃった」
「そうなんだ。行けばいいのに」
「だってさ、ハローウィンって、普段は人目につかないお化けや魔女が主役のお祭りじゃん」
「そうみたいだな」
「なのに、わたしの学校みたいに、リア充が仮装なんてしちゃってさ。これじゃあ、本来のハローウィンの意味がなくなっちゃうよ。行ったって疲れるだけだよ」
「リア充といえば、渋谷も、すごいみたいだしなー」
「本当のお化けや魔女、それでいいのって感じだよね」
「まあ、お化けや魔女がいればの話だけどなー」
そんな話をしていると、コンビニの自動ドアが開いた。
厚化粧をした、トラ柄のコートを羽織ったおばさんだ。
「ここが北海道のコンビニー? えらいぎょうさん仕入れてるなー。ねえ、店員さんー。優勝グッズあるー?」
「???」
わたしの頭にハテナマークが浮かぶ。
「なんやねん。固まってもうたん?」
「えーと、優勝グッズとは何のことでしょう?」
「優勝いうたら決まってますやろ。阪神ですわ。ここでも、優勝グッズ扱ってはるやろ?」
「えーと、阪神のグッズは、ないですね……」
「ない? なんやねん。アカンわー、この店。こんなんで商売しよ思ったら、やっていけまへんでー」
「…………」
「あー、もう、固まってもうたわー」
客は、捨て台詞なのか独り言なのか分からないことを言って、何も買わずに出て行った。
「お疲れ……中原」
「うん……ハローウィンがもう来ちゃったよ……」
「ちょっと、違うかもしれないけどな……」
しかし、わたしはハッとする。
「てゆーかさ、ここは北海道だよ。阪神のグッズなんて売ってないよ。セリーグってなんだよ。北海道はパリーグじゃん。世の中はパリーグなんだよ」
「たしかに、北海道は阪神とは縁がないよな」
「そうだよ。電車だって、ほとんどJRなんだよ。阪神、近鉄、南海、阪急なんて言っても分からないよ。なんでJRから私鉄に乗り換える時には改札出ないといけないのさ!」
「あー、北海道民が外へ出ると戸惑うことのトップ入りするネタだなー」
「はあ、やっぱり、都会の人はそもそもハローウィンの生き物みたいだからね。なんでもわかっちゃうんだよ」
「なんだよ、そのたとえ」
わたしがため息をつくのと同時に、また客が入ってきた。
頭に、野球のユニフォームを着ているおばさん達だ。ギラギラのコーデを全身にまとい、頭に熊のぬいぐるみをつけている。
「今日は我が家で最終戦のパブリックビューイングよー」
「あらやだー。わたしこのお菓子好きなんだけど、太っちゃうわー」
「今日はうちの亭主出張だから、お酒飲んじゃいましょ」
「コンビニなのに応援グッズがあるのは助かるわよねー」
おばさんたちは、観戦グッズや食べ物、飲み物を買って、店を出て行った。
「なあ、中原。あれは、北海道らしいけど、OK?」
「よく考えたら、北海道の球団の応援団も、たいがいだよね」
「北海道の球団の応援団って、マダムが多いよな」
「これも、他県の人が見たら、ハローウィンみたいなのかな?」
そもそも、仮装とは? お化けとは?
ハローウィンだから、なぞはなぞのままでよいのかな?




