第42話 自転車のマナー
佐々木がコンビニ内のゴミ箱に溜まったゴミを回収して、ゴミステーションに行こうと自動ドアから出ていく。
「うわっ!!」
佐々木の悲鳴が聞こえた。
「佐々木、どうしたの!?」
わたしは驚いてコンビニの外に出る。
佐々木はゴミ袋を持ったまま、その場へ尻もちをついていた。
「佐々木、大丈夫?」
「ああ」
「一体どうしたの?」
「自転車にひかれそうになった」
見ると、向こうの方で、黒いフードを着た男がこっちを見ている。
佐々木がその場に立ち上がると、男は佐々木にけががないことが確認できたようで、ペダルに足をかけて、
「バカヤロー! あぶねーじゃねーか!」
と暴言を吐いて、自転車をこいでどこかへ消えていった。
「な、なんだよアイツ!! あっちが悪いんでしょ佐々木?」
「ああ。でも、あたしも店を出る時、よく確認しなかったし」
「いやいや。今、法律改正されて、自転車は車道を走ることになったんだよ。しかも、あの自転車、あっちの方向に行ったってことは、逆走だし」
佐々木は、パンパンと、お尻のほこりをほろった。
「今のご時世、何が起こるか分からないからな」
「佐々木、コンビニに入って休んでなよ。ゴミはわたしが持っていくから」
「ありがと、中原」
佐々木は、ゴミをわたしに渡して、コンビニの中へ入っていった。
それにしても、腹立たしい。
道路交通法も守らないで、しかも被害者に暴言を吐くなんて。むしゃくしゃする。
コンビニの中へ戻る。
「まったく、さっきの自転車だったら頭にきちゃうよね」
「なんだよ中原、まだ怒ってるのか?」
「そりゃそうだよ。佐々木のこと、危険な目にあわせて。ちゃんとルールを守れよってね」
「まあ、そうだけどさ。でも、田舎は結構苦労しているみたいだよな」
「えっ、どういうこと?」
「自転車は車道を走らないといけなくなっただろ? でも、車は自転車を追い越す時は1メートル以上空けて抜かさないといけなくなったみたいで、道幅の狭い道路なんかは、大渋滞になるんだってさ」
「ああ、確かに、それ聞いた」
「北海道の一般道って、八十キロとか普通だろ?」
「そこを自転車が走ると、渋滞になるよね」
たしかに、佐々木の言う通りだが、
「でも佐々木。八十キロで走るのも、反則なんだよね」
「まあ、そうだよな。制度と現実の乖離ってやつだな」
「なんか、難しいね……」
バイトのシフトが終わった。
わたしたちは学校の制服に着替え、コンビニを後にした。
「はあ、また一週間、佐々木に逢えないのかぁ。しかも、わたし、今回は渡辺のババアと一緒のシフト多いんだよね~」
「ババア言うなって。あたしは、赤坂さんとが多いな」
「赤坂かぁ~。でも、のみ込み早いよね。わたしを舐め腐らなければいい子なんだけどな~」
「それだけ懐かれてるってことだろ」
佐々木と別れる地下鉄月寒中央駅前の交差点まできた。
「したっけねー、佐々木」
「ああ。したっけ……って、中原、あれ」
佐々木が前方を指さす。
警察官が誰かを囲んでいる。
「あ、あいつ、さっきの自転車の男!!」
自転車の男が、警察に止められたようだ。
どうやら、切符を切られているようだ。
なんだか、嬉しくなってしまった。佐々木に尻もちをつかせた挙句、暴言まで吐いた男がその報いを受けているのだ。
「むっふー、ざまあー! ざまあー!」
「中原……。たしかにそうだけど、ある程度マナーは必要だぞ……」




