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週一度コンビニバイトで逢う二人  作者: おとさらおろち
37/38

第37話 ちょっと、ズルいかな(佐々木)

「ねえ……佐々木」


「なんだ……中原」


「その、どうして、赤坂がいるの?」


「さあ……」


 今日の赤坂さんのシフトは、あたしと中原の後だ。


 なのに、早くも赤坂さんは仕事に出てきている。


 ここのところ、ずっとそうだ。中原とのシフトじゃない時でも、あたしのシフトの時間帯には、赤坂さんがくるようになってしまった。


「赤坂さん。シフト以外の時間帯に来ても、バイト代入らないよ? 損じゃない?」


「損じゃないですよー! わたしは、佐々木先輩と一緒に働けるだけで、お金以上のものを得ることが出来ているんですから!」


「お金以上の?」


「はい! 人生を教えていただいているっていうかー、佐々木先輩の生きざまを見て学ばせてもらっているんです!」


「そ、そう……」


 でも、さすがに、あまり良いことではないように思う。


 あたしは、中原を見た。


 中原は、うんと一つ頷いた。


「あのー、赤坂?」


「なんですか? というか、わたしのこと、呼び捨てなんですね、中原パイセンは」


「赤坂だって、わたしのことパイセンとか言ってるじゃん。まあ、なんだ。確かに佐々木からは、お金以上のことを得ることができるのは認める」


「そうでしょ、そうでしょ」


「でも、やっぱり、お金は大切だよ。わたし達は時間を切り売りして、お金を稼いでいるんだよ。最近はネットなんかで、時間を切り売りするのは非効率なんて言われているけど、とにかく、女子高生はこれくらいでしかお金を稼げないのだよ」


「なに言ってるんですか。お嬢様高校の中原パイセンが言っても、説得力ないですよ」


「ううっ。お嬢様高校関係ないじゃん! わたしもお金が欲しいんだよー」


「えー。本当は中原パイセン、お金持ちのお嬢様なんでしょう? コンビニなんか下々の世界にこなくてもー」


「何をー! 知った口聞いてー」


 はあ、と思って、あたしは口をはさむ。


「赤坂さん。あたしも、中原の言うことは正しいと思うよ。赤坂さんが仕事に慣れようと思って、シフト以外にもあたしから学び取ろうとしてくれるのは、正直嬉しいよ。でも、あたしたちはアルバイターだから、やっぱり、対価をもらわないといけないんだ。赤坂さんは、仕事が楽しくて、それでいいって思っているかもだけど、それじゃあ、世の中が回らないんじゃないかな。あたしはそう思うよ」


「うーん」


 赤坂さんは、しばらく考えていたが、


「アハハ、そうですよね。ちょっとわたし、舞い上がっちゃってましたよね。すみませんっしたー」


「うんうん、分かればよろしい」


 と、中原がうなずいている。


「じゃあ、わたし、家近いので、自分のシフトまで自宅待機してますねー。したっけー」


「あっ、別にそんなに急に帰らなくても……、行っちゃった」


 赤坂さんは、ぴゅーっと帰って行ってしまった。


「はあ、帰った帰った。ようやく、二人きりだね」


「ああ。中原と二人になると、本当に落ち着くよ」


「まったく、赤坂の佐々木ラブはすさまじいなー」


「でも、中原のこと、分かったように言ったのは、聞き捨てならなかったな」


「どうして?」


「どうしてって、人を決めつけるのは、よくないだろ」


「佐々木が言うと、説得力ありありだよね。山あり谷ありの人生送ってきただけあって」


「なんだよ、それ」


「佐々木なんて、色んな人から、外国人ですかーとか、怖そーって言われてたじゃん。その佐々木が言うと、わかりみってやつだよ」


 中原が、ニコっと笑う。


「でも、佐々木、最近怖そうって言われないじゃん」


「ああ。もしかしたら、赤坂さんがバイトにくるきっかけにもなった、あの万引き犯を掴めた動画が拡散されたせいかな」


「まあ、それもあると思うけど。なんかさ、最近の佐々木ってさ、笑顔が増えたし、なんだか、怖さがなくなったような気がするよ」


「一緒にいる時間が長くなったから、慣れただけじゃない?」


「ううん。なんだか、クールビューティーって感じから、かわいい系になってきているような気がするよ」


「ううっ、恥ずかしいこと、言うなよ……」


 あたしは照れてしまう。中原は、やはりたまに、こういう恥ずかしいことを言い出す。


 あたしは話題を変える。


「でも、赤坂さんには、ちょっと悪いことしちゃったかな。仕事を頑張って覚えようって意識もあるんだから、それを遮っちゃったからさ」


「ううん。きっと、いいんじゃない。お金はきっちりとっていうこと、早いうちに覚えてもらった方が」


「それにさ」


「うん?」


「あたし、やっぱりこの時間は、中原と二人だけになりたいなって思っちゃって。それで、中原のことにに乗っかって、ちょっとズルかったなって」


「そ、そっかー」


 中原はうつむいた。


「中原?」


「ううん。なんだか、照れるなー。二人だけになりたい、なんて思ってくれて」


「うっ、いや、あの、だって、やっぱり、中原といると、なんていうか、楽しいし」


「なんだよー、佐々木。告白かー」


「うっ、うるさい!」


「アハハ。でも、わたし達も、赤坂のこと、まだ何も知らないし、ちゃんと考えないとだよねー」


「なんだよ中原、いいこと言うじゃん」


「だって、わたし達、先輩になったんだよ」


「そうだったな。中原パイセン」


「うーん。結局、わたしは、あの呼び方で進められるの?」


「そうなんじゃない?」


 ようやく札幌にも、温かい空気が流れ込んできている。


 全国ニュースでは夏の陽気とか言われているけれど、北海道の陽気は、ようやくこれからだ。


 新学年になったあたし達には、この先何が待ち受けているんだろう。


 そして、これからも、週に一度、コンビニバイトでの中原との時間が、続いていくといいな。

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