第34話 京都なのに十勝産小豆使用(中原)
ようやく暖かくなってきたからか、桜餡の入ったお菓子など、春らしいお菓子を買っていく客が増えた。
今もまた、お花見のイラストが描かれた和菓子系のお菓子を持った客が、わたしのレジに並ぶ。
あのぶっ壊されかねないテレビ局の有名時代劇の主役の一人、豊臣秀吉が五重塔と一緒に描かれている。何やら、たくさんの、滑稽な格好をした人たちと花見をしている様子がイラストされている。
「中原、それ、醍醐の花見な」
「なにそれ、佐々木」
「さっきのお客さんが持ってきたお菓子のイラスト、じっと見てたじゃん」
「なんか、いにしえって感じだったからさ」
「舞台は京都だぞ。秀吉が死ぬ年に開催した、各地の大名を招いた一代お花見会だ」
「佐々木、そういうの詳しいよね」
「で、結局何が気になってたんだ?」
「うん、デカデカと十勝産小豆使用って書いてあったからさ」
「そりゃ、十勝産小豆はブランド力高いからじゃない?」
「だってさ、イラストは京都なんだよ。なのに十勝産小豆なんだよ。いいの、それで。だったら、北海道のイラスト書けよって感じじゃない?」
「春に北海道のイラスト書いても、まだ雪があるしなー」
「京都なんだから、ちゃんと京都のもの使えっちゅーの」
「そうは言っても、小豆はもう北海道が生産の独壇場みたいになってるからな」
「そこそこ、そこだよ佐々木!」
「どこだよ」
「北海道が小豆の一大産地じゃん。それってもう、ブランドというよりも、大量生産でただ安いっていう理由じゃん。なのに、勝手にブランドイメージ作って、さも高級そうに売るなんて、詐欺まがいじゃん」
「中原、小豆農家の人にケンカ売りたいのか? コンビニのアルバイトが言うセリフじゃないぞ」
「十勝産小豆って言っても、どんな環境で育っているか、みんな知らないんじゃない。大地の香水なんて、京都の人間、かいだことあるのかよ」
「大地の香水言うな」
「わたしの学校、お嬢様学校じゃん」
「円山女子高の話?」
「それで、最近みんな、旅行してお土産買ってくるわけ」
「いいじゃん。お土産もらえて」
「餡子入っているもの見たらさ、原料はたいてい十勝産小豆って書いてあるの」
「シェア率高いな」
「だって、これって逆輸入ってやつじゃん。なんでわざわざ道外まで行って、北海道のもの買ってくるのさ。ありがたみも何もないよ」
「中原、結局、旅行に行っている人がうらやましくてひがんでるだけじゃん」
「ま、まあ、それもあるけど。とにかく、餡子は必ず北海道十勝になるっていうことだよ」
「どういうことだよ。でもまあ、北海道のイメージが上がることは、道民からするとなんか嬉しいじゃん」
「そりゃ、そうだけど」
「それに、例えば京都って言っても、琵琶湖疎水の水なんて、飲みたいって思う?」
「ソスイ? いや、なんか、よく分からないけど、大して飲みたいと思わない」
「だけど、帯広の水、なんて言ったら、飲みたいじゃん」
「うん。水道水がそもそもおいしい水として有名だからね」
「そういうのがある北海道って、やっぱりいいところなんだよ」
「……佐々木、なんか、きれいにまとめたね……」
「あたしは、やっぱり北海道に生まれて良かったな、って思ってるよ」
「そっか。うん、確かにそうかもね」
「まあでも、確かに、大地の香水は、嫌だな」
「だよねー。養豚所の臭いも嫌だしねー」
「第一次産業従事者に感謝だな」
「うん。うん。ところでさ、これも友達の農業成金の話なんだけど」
「農業成金言うな」
「農家の子どもって、アイドル好きが多くて、農閑期は日本中で追っかけやってるって言ってたよ」
「それ知ってる。アイドルのライブで盛り上げてる人、農家もかなり交じってるらしいよな」
「やっぱり、文化は第一次産業から作られるんだよ」
「なんだか、話が大きくなったな」
「うんうん。それだけ、小豆は偉大だってことだね」




