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役立たずと追放された俺の保存倉庫は、飢えた世界を救う最後の希望だった  作者: レモンティー


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第九十三話 地下通路の四十七袋

税関通路の入口は、港の干上がった排水溝の奥にあった。

バルクが錆びた格子を外すと、冷たい風が吹き出した。

壁には馬車の車輪が擦れた新しい跡が残っている。

奥で見つかったのは、食料ではなく四十七袋の空袋だった。

すべて王宮の紋章付き。

袋の口には異なる色の糸が結ばれ、日付ごとに分けられていた。

ミラは糸の色と港の船便記録を照らし合わせた。

盗まれた麦は、数回に分けて敵国側へ運ばれていた。

「敵国が奪ったのか」

バルクが歯を食いしばる。

「違う。受け取りの印は両国の救援隊が使うものだ」

俺は袋を裏返した。

内側に黒穂連合商会の古い焼き印がある。

解体されたはずの商会の倉庫が、王宮の軍需品を扱っていた。

通路の出口で、少年が待っていた。

父親が運搬の仕事を引き受け、帰ってこないという。

少年は俺たちを地下の別室へ案内した。

そこには鎖で閉じられた扉と、内側から刻まれた日付があった。

地下通路は二人が並べば肩が触れるほど狭かった。

バルクが先に入り、俺とミラが続く。

壁の水位の跡は膝より高い。

潮が満ちれば奥の部屋が水に浸かることを、三人はすぐに理解した。

「先に出口を確保する。奥へ進んで戻れなくなるのが一番まずい」

バルクは縄を入口の鉄環に結んだ。

俺は保存倉庫から飲み水を取り出し、荷車に積んであった乾いた布をバルクに渡した。

保存できるのは食料と飲料だけだ。

鍵や工具は普通に手で持って運ばなければならない。

四十七袋の空袋には、泥の乾き方に差があった。

ミラが糸の色を分けると、青い糸の袋だけ底が黒く汚れている。

「船着き場で積み替えた袋かもしれない」

「証拠として残そう。今ここで全部持ち帰るのは危険だ」

俺は袋の位置を壁の目印とともに記録した。

そのとき、奥から三度、金属を叩く音がした。

間を置いて、また三度。

「人がいる」

少年は父親が閉じ込められた部屋を指さした。

鎖は錆びていたが、扉の蝶番は新しい。

誰かが最近になって閉じ込めるために直したのだ。

「助けてくれ」

扉の向こうから掠れた声がした。

六人のうち何人が動けるのか、返事はばらばらだった。

バルクは斧で鎖を打とうとしたが、ミラが止めた。

「この振動で天井の石が落ちる」

通路の上には古い亀裂が走っている。

三人は入口まで戻り、港の石工を呼んだ。

時間はかかった。

その間、俺は扉の隙間から細い管で飲み水を渡した。

一度に大量に飲ませないよう、医師の指示を受けて少しずつ。

少年は管の端を握り、父親へ声をかけ続けた。

「ここにいるよ。帰るまで待ってる」

石工が支柱を立て、鎖を切る場所を示した。

作業の途中、潮の匂いが強くなった。

水が上がり始めている。

「あと十分だ」

とバルクが言った。

「十分で開かなければ一度撤退する」

少年は首を振った。

「父さんがいるのに?」

俺は答えに詰まった。

「ここで俺たちまで倒れたら、助けに戻る人がいなくなる」

その言葉を口にする苦しさを、少年の前で隠さなかった。

最後の一撃で鎖が外れた。

救出した荷役夫は立つこともできなかった。

俺たちは一人ずつ支え、石段を上った。

港では追うべき船の帆が小さくなっていた。

バルクが唇を噛む。

「今なら小舟で追えるかもしれない」

「この六人を医師に渡す。追跡は港の見張りに頼む」

選ばなかった道にも、失うものがあった。

だが六人の名前を呼び、六人の返事を聞いたとき、俺は自分の選択を後悔しなかった。

荷役夫の一人は担架の上で、財務官の紋章を見たと証言した。

その声は弱かったが、逃げた船より確かな手がかりだった。

救助された荷役夫の一人は、少年の父親だった。

少年は担架へ駆け寄ったが、すぐには触れられなかった。

痩せた父親の顔が、出発した日の顔と違っていたからだ。

「父さん?」

父親は弱く頷いた。

「待たせたな」

少年は泣きながら首を振った。

「ずっと音を鳴らしてくれたから、いるって分かった」

父親は鎖扉の内側で、誰かが来るたび三度壁を叩いていたという。

俺はその合図を、救助記録の一番上に書いた。

港の見張りは逃げた船の行き先を調べたが、嵐が近づき、追跡船は出せなかった。

バルクは悔しそうに拳を握った。

「せめて荷の量が分かれば」

ミラは空袋の糸の色を示した。

「四十七袋全部が同じ船に積まれたとは限らない。記録を照らせば、どの便で消えたか追える」

その言葉で、バルクの表情が変わった。

船を追えなくても、残された袋と港の記録は調べられる。

俺は六人を医師に預け、地下通路を封鎖するよう頼んだ。

今度は人を閉じ込めるためではない。

誰も再びあの場所で倒れないためだった。

夕暮れ、少年は診療所の前で待っていた。

父親はまだ眠っている。

少年は俺へ、地下で聞こえた三度の音を真似してみせた。

金属を叩く小さな音だった。

「父さんが生きてるって分かったんだ」

少年は父親が目覚めたときのために、水筒を大切に抱えていた。

俺は診療所の職員にその思いを伝え、少年が休める椅子を用意してもらった。

石工は扉を開けるために使った支柱を入口へ残した。

次に通路へ入る者が、同じ場所で天井を崩さないためだ。

少年は支柱に小さく父親の名を書いた。

診療所で荷役夫たちの容体が落ち着くまで、俺たちは港の運搬記録を照合した。

四十七袋の空袋は、糸の色も泥の乾き方も同じではない。

複数の便で運ばれた可能性が高い。

俺は袋の発見場所と記録を別々に残し、確かめていない数量を断定しないようミラに頼んだ。


翌朝、少年の父親が目を覚ました。

「話したいことがある」

と言い、少年に一度だけ廊下で待ってもらった。

「俺は荷を運んだ。盗まれた麦だと気づいても、仕事を失うのが怖くて黙っていた」

父親は濡れた上着の裏から、小さな木札を一枚取り出した。

「これが運んだ夜の便番号だ。荷を受け取った男は、王宮の財務官の紋章をつけていた」

俺は札を一度だけ受け取り、ミラに番号と運搬票を照合してもらった。

番号は一致した。

ただし、その男が命令を出したかどうかは、まだ調べなければならない。

「息子には、俺が盗みを手伝ったと知られたくない」

「隠す約束はできません。でも、あなたが自分から話したことも、六人で水を分け合ったことも、正しく残します」

父親は長いあいだ黙り、やがて少年を呼んだ。

「父さん、帰れる?」

「すぐには帰れない。話さなきゃいけないことがある。でも、どこにいるかは必ず伝える」

少年は父親の手を握った。

「帰ってきてくれたなら、僕は聞けるよ」

俺は二人の会話から目を離し、札の写しを公証人へ渡した。

逃げた船は戻らない。

それでも、追跡より救助を選んだことで、次の扉を開く証言が残った。


翌日、俺は証人たちを連れて王宮へ向かった。

門の前には兵が並び、少年は父親の手を握っていた。

門番が読み上げた通行禁止命令には、財務官の署名があった。

ミラは荷役夫の木札と照合済みの運搬票を開き、署名のある欄を指さした。

「こちらは麦を運ばせた日の票です。そしてこちらが、今朝の通行禁止命令。同じ財務官の署名があります」

ミラは二枚を重ね、日付と署名欄が同時に見えるように掲げた。

「運搬に関わる書類を承認した人物が、その便について証言できる人を門の外へ止めている。命令の理由と、誰が運搬を指示したかを調べる必要があります」

若い兵の視線が、二枚の書類の間を行き来した。

門はまだ閉ざされたままだったが、読み上げる声が止まった。

「署名が同じだけで罪は決まらない」

と兵は言った。

「だからこそ、証拠を残して調べるんです」

とミラが返した。

「命令を破れば、俺たちも罰せられる」

と若い兵が言う。

「命令に従うことと、証拠を消すことは違う」

とバルクが答えた。

俺は荷役夫の父親を振り返った。

彼は震える手で息子の肩を抱いている。

ここで無理に門を突破すれば、彼が証言を続けられる保証はない。

「署名の真偽と、承認した内容を独立した記録官に確かめてもらう。ここで争えば、証人が危険にさらされる。公証人の控えを別の窓口へ届けよう」

ミラは二枚の写しを公証人へ運ぶ使者に託した。

若い兵は通行禁止命令を握ったまま、父親と少年を見た。

「この人を通したら、俺が罰を受ける」

父親が口を開いた。

「俺も命令に従って袋を運んだ。誰の食事を奪ったか、知らないふりをしていた」

兵は答えなかった。

ただ、証人が立つ場所を門の陰へ移し、群衆から見えないようにした。

命令を破ることはできなくても、危険にさらす必要はないと考えたのだろう。

俺はその小さな判断を見て、門を開けることだけが今日の勝利ではないと思った。

少年が父親の手を握り直す。

父親は公証人の窓口へ向かう前、少年の肩に手を置いた。

「戻ったら、いつもの合図をする」

「今、して」

少年が言うと、父親はその手の甲を三度叩いた。

少年も三度返した。

俺は護衛に帰路の時刻と待ち合わせ場所を確認し、少年にも同じ内容を伝えた。

父親の証言が必要でも、危険を隠して連れ出すわけにはいかない。

父親が護衛と公証人の窓口へ向かうと、少年はさっき触れられた手の甲をもう一方の手で包んだ。

地下通路の空袋が示した運搬経路と、財務官の署名の真偽を確かめる仕事はまだ残っていた。

「待ってるから」

父親は振り返り、一度だけ頷いた。

俺は少年のそばに立ち、二人の姿が角を曲がるまで見送った。

門が開くかどうかより先に、あの父親を無事に帰さなければならなかった。

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