第4話 闇の炎に抱かれろ
《終焉剣バル・ネメシス》の切っ先が向けるのはただ一つ。
この学園を破壊する。
それが世界の神になる第一歩になるんだ!!
力は溜まる、もうすぐ放たれる!!
「学園を破壊する気!? そんなことはさせないわ!」
マリアが影と学園の間に割り込む。
『お前ごと吹き飛ばしてやろう』
マリアが両手を目の前に掲げて力を込め始めた。
金色の光が徐々に大きくなり、シールドを展開していく。
「できるものなら、やってみなさい! 私は命に代えてもこの学園を守るわ!
光は滅びない。希望は潰えない。人の願いは、決して終わらない。
神よ。幾千幾万の祈りを束ね、世界を護る最後の光を授けたまえ。
《創界の聖盾》」
学園を守るように金色のシールドが展開された。
『脆い、脆い!! その程度のもの吹き飛ばしてやろう!!
穿て、《滅界の黒炎》!!』
剣先から莫大な黒炎をまとった魔力が放出される。
オレと影の力だ!!!
魔力は聖盾へと最大出力で放出された。
『うおおおおおおッ』
聖盾とぶつかれば相反する魔力は膨大なエネルギーへと変換される。
爆風に屋上の壁が軋みを上げる。
オレも立つことがままならず、片膝をつき耐えるしかなかった。
粉塵が晴れ、そこには屋上に倒れ伏しているマリアとその傍らに立つ影。
影は赤く冷たい瞳でマリアを見下ろした。
『とどめだ』
「うっ………くっ……」
悔しそうにマリアは影を睨みあげる。
わかる、わかるよ、影。
この女は、一度は愛した女だ。
『……我と共に来い、マリア』
「なんですって……?」
マリアを手放すには惜しい。
『我はやはりお前を愛している』
マリアの横に片膝をつき、顎を持ち上げる。
不敵な笑みを見せ、影は指先に魔力を込める。
『光よ、消え去れ。
神よ、救おうとするな。
我が内に眠りし深淵よ――今こそ、その封印を解き放て。
聖なる名も、救済も、すべて捨てよう。
この身、この魂、この命さえも……闇に捧げよ。
さあ――絶望に染まれ。
すべてを焼き尽くし、灰すら残すな。
――闇の炎に抱かれろ。
《黒焔終焉》』
マリアの身体が一瞬で黒炎に包まれる。
「きゃぁぁぁぁああああ」
マリアの悲鳴が響く。
マリアの中の聖なる力が、影により燃やされているのだ。
その証拠に片翼が黒炎により燃え尽きる。
やがて、黒炎が収まればマリアがゆっくりと立ち上がった。
そこに立つマリアは聖女とは言えなかった。
片翼は燃え尽き、残された翼は漆黒の羽へと染まる。
美しい純白のドレスは漆黒へと変わり、妖艶な笑みをも見せていた。
「影……、やっぱり私を愛していたのね」
『俺が愛するのはお前だけだ』
影がマリアに一歩近づき、顎に手を添える。
そして静かに口付けを落とす。
2人の唇が離れれば視線が交わる。
『我とともに来い、マリア。深淵の王の妻として迎えよう』
「あなたとならどこまでも落ちてあげるわ。たとえ、神に背を向けたとしても」
マリアが縋るように影の胸に手を添え、体をもたれさせた。
影がマリアを抱き上げる。
『開け――世界の扉よ。
我を拒む理を破壊し、次元の壁を越えろ。
此処ではない何処かへ。
この身、この魂を、新たなる運命へ導け!
――顕現せよ、異界渡航の魔法陣!
《次元超越》』
影の足元に巨大な魔法陣が浮かび上がり、複雑な紋様が青白い光を放つ。
『さあ、行こうか――まだ見ぬ世界へ』




