↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未登録の魔法少女  作者: 浅川


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
148/178

第百四十八話

 魔法少女協会から独立した新組織『白百合のリリィ・アイギス』。

 都内の地下に構築された彼らの新たな拠点には、最新鋭の機材が運び込まれ、活気に満ちた空気が漂っていた。

 急造とはいえ立派に整備されたオペレーションルームの円卓を、旧協会から離反した幹部とトップエースたちが囲んでいる。


「——それでは、これより第一回『白百合の盾』運営報告会議を始めるわ」


 円卓の上座で、代表である姫嶋結衣が凛とした声で宣言した。

 彼女の両脇には、副代表の湯野麗香と、情報班トップの新実由鶴が控えている。


「まずは湯野副代表、資金面と運営状況の報告を」


「はい。先日立ち上げたクラウドファンディングですが、目標額を数千パーセント上回る支援が集まり、現在も金額は伸び続けています。当面の活動資金、機材のリース代、そして専属契約を結んだ治癒魔法使いたちへの報酬など、財務状況は極めて盤石です」


 湯野がタブレットを操作しながら、淀みなく答える。


「素晴らしいわ。私の方からも、日本政府との交渉状況を報告しておくわね。非公式ではあるけれど、パイプは確実に繋がりつつあるわ。政府内でも、旧協会の『権力への固執』と『現場への無茶な命令』に難色を示していた派閥が多くてね。近いうちに、私たちを特例の独立防衛機関としてバックアップする法案が水面下で動き出すはずよ」


 姫嶋の報告に、円卓を囲むエースたちから安堵の息が漏れた。


「次は情報班。由鶴、お願い」


「はいはい。新たな魔獣感知ネットワーク『白百合のリリィ・アイ』の稼働状況ですが、控えめに言って最高ですね」


 由鶴が白衣のポケットに手を入れたまま、モニターに都内のマップを映し出した。


「都内の監視カメラと民間ネットワークをフル活用したことで、旧式の協会レーダーよりも平均して数分早く、魔獣の発生予兆を捉えることができています。現場の展開速度においては、完全に我々が旧協会を出し抜いていますね」


 由鶴はそこで眼鏡を押し上げ、少しだけ皮肉げな笑みを浮かべた。


「ただし、問題が一つ。……世間の『ゴースト』フィーバーです。昨日のセントラルパークと商店街での一件がSNSで拡散され、一般人の間でも彼女の存在が広く知れ渡りました。『マホクロ』のカード価格が高騰しているのは氷山の一角で、彼女を神格化するような動きすら見られます。福音の鐘だけでなく、一般市民までカルト化しそうな勢いですよ」


「……ゴースト」


 その名を聞いた瞬間、氷のトップエースである羽衣緋雪が、ぎゅっと拳を握りしめた。


「確かに彼女の実力は規格外だし、私たちも何度も助けられたわ。純粋に人々を守ろうとする姿勢には、魔法少女として心から尊敬してる。……でも、私は絶対に負けないわ!」


 緋雪の瞳に、ゴォォォッ! と謎の闘志の炎が燃え上がる。


「あいつが三神くんの日常を付け狙うストーカー女である以上、女としての戦いは別よ! いつまでも彼女の助けを借りてばかりじゃ、三神くんの隣を歩く資格なんてないんだから!」


(……魔法少女としての実力と、女としての嫉妬が完全に混線してるわね)


 隣に座る槍使いのエース・弓飛鳥が、呆れたように小さくため息をついた。


「ひ、緋雪、落ち着いて。現場からの報告に戻るわよ。由鶴のシステムのおかげで、事前の民間人の避難誘導が劇的にスムーズになったわ。被害規模も、旧協会時代に比べて大幅に減少しているわ」


「私もですっ!」


 土属性のパワー型エース・只野真奈が元気に手を挙げる。


「支援金のおかげで、私の新しい特注ハンマーも無事に届きました! これなら、魔獣の足止めも瓦礫の撤去も、今まで以上にガンガンいけますよ!」


「うんうん、頼もしいねぇ」


 真奈の隣で、マイペースにお茶をすすりながら微笑むのは、旧協会から緋雪たちと共に離反した旧・炎のエース、新堂鈴乃しんどう すずのであった。


「私も、炎の広範囲魔法を活かして、みんなのサポートに回れてるよ。旧協会みたいに『犠牲を払ってでも突撃しろ』なんて無茶な命令が出ないから、すごく連携が取りやすいしねぇ」


 鈴乃ののんびりとした口調に、会議室の空気が少しだけ和らぐ。


「ありがとう、鈴乃。あなたが合流してくれたおかげで、エース部隊の個人戦力は完全に旧協会を凌駕したわ」


 姫嶋は深く頷き、円卓の端に座る三人の少女たちに視線を向けた。


「さて。最後は、広報兼・実戦部隊の三人、報告をお願い」


「はいっ!」


 元気な声と共に立ち上がったのは、三神澪、三神玲奈、そして星宮きらりの三人だった。

 彼女たちは、胸に『白百合』をあしらった新しいエンブレム付きの衣装を身に纏っている。


「まずは広報担当として報告します!」


 アイドル魔法少女であるきらりが、ウインクを飛ばしながらタブレットを掲げた。


「きらりの公式チャンネルを使った『白百合の盾』のPR配信、大好評ですぅ! 『みんなの笑顔を守る盾、きらりたちと一緒に頑張ろうね☆』って呼びかけたら、支援金がさらにドカンと増えました! 若年層の支持率はぶっちぎりでトップです!」


「戦闘班としての報告もバッチリだよ!」


 玲奈が、自信満々に胸を張る。


「専属の治癒魔法使いの人たちのおかげで、怪我の治りも完璧! もう前線でガンガン戦えるよ。昨日も、B級魔獣の群れを三人でサクッと片付けてきたしね!」


「ええ。由鶴さんのシステムで先手を打てるから、安全マージンを確保した上で戦えているわ」


 澪が、真剣な表情で締めくくった。


「私たちも、もう誰かの足手まといにはならない。それに……零に、これ以上無用な心配はかけたくないから。私たちがしっかりして、この街を安全に守れるって証明しなきゃね」


 澪の言葉に、円卓のメンバーたちは優しい微笑みを浮かべた。

 彼女たちは知らない。その「守るべき心配性の弟」こそが、世界を震撼させている特S級の未登録魔法少女であり、昨日も商店街で魔獣を瞬殺した張本人であるという事実を。


「澪ちゃんの言う通りよ!」


 緋雪が、バンッ! と机を叩いて立ち上がった。


「三神くんの平穏な日常を守るためにも、私たちが完璧な防衛網を築き上げるの! あのストーカー女が手出しする隙もないくらいに、私たちの愛と正義でこの街を包み込んでみせるわ!」


(……だから、愛の方向性がズレてるってば)


 飛鳥が再び心の中でツッコミを入れる中、姫嶋は満足げに頷いた。


「みんなのモチベーションが高いのは良いことね。旧協会は今、ゴーストの捕獲という実現不可能な任務に固執して焦っているはず。星監や福音の鐘といった裏組織の動向にも警戒しつつ、私たちは私たちの信念を貫きましょう」


「「「了解!!」」」


 力強い返事が、地下のオペレーションルームに響き渡る。

 旧協会から決別し、真の防衛組織として歩み始めた『白百合の盾』。彼女たちの結束は、互いへの信頼と、一人の零への熱すぎる思いを燃料にして、どこまでも強固なものになっていくのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。