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異世界転生してパワハラ上司を駆逐してたらいつの間にか偉くなってた  作者: ぽてと
書類上のホワイト組織は、絶望のデスマーチ(物流ルート)でした 〜「勢いで乗り切れ」と喚く意識高い系トップを、最強の社畜が物理的論破で更迭します〜

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第47話 成長した最強の盾と矛(物理的除雪)

薄暗い魔の森の街道に、五十匹を超える『森の暴食狼フォレスト・ウルフ』の群れが、血走った赤い双眸をギラつかせて迫っていた。


「アァァァァッ! 来るっ、食われるゥッ!!」


横転した荷馬車の陰で、若き輸送兵のリックが頭を抱えて悲鳴を上げる。

護衛兵を持たない丸腰の輸送部隊にとって、森の暴食狼は絶対的な死の象徴(死神)だった。大柄な馬の喉笛すら一撃で噛み千切る強靭な顎。それが五十匹も群れをなして、四方八方から同時に襲いかかってきたのだ。


極限の疲労で立ち上がることもできない輸送兵たちは、ただ絶望に目を閉じ、死の痛みが訪れるのを待つことしかできなかった。


しかし――。


「――展開。広域防衛・絶対安全圏コンフォート・ゾーン


白髪の魔道士クラウスが、静かに魔法の杖を地面に突き立てた。

その瞬間。リックたち輸送兵をすっぽりと覆い隠すように、淡い六角形の光のドームが、半径二十メートルにわたって瞬時に展開された。


ドガガガガガァァァンッ!!


獲物に飛びかかろうと宙を舞っていた暴食狼たちが、目に見えない強固な光の壁に次々と激突し、無様な音を立てて弾き飛ばされていく。

鋭い爪で引っ掻こうが、数十匹がかりで体当たりをしようが、光の壁にはヒビ一つ、傷一つ付かない。


「な、なんだこれ……!? 結界魔法……!?」


リックが恐る恐る目を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。

ドームの「外」では魔物たちが狂ったように吠え、牙を剥いて壁を叩いている。しかし、ドームの「内側」は、まるで別の世界のように切り離されていたのだ。


魔物の恐ろしい咆哮は一切聞こえず(完全防音)、森のジメジメとした不快な湿気も消え去り、代わりに適度な暖かさと、心を落ち着かせるラベンダーのような微かな香りが漂っている。


「す、すごい……魔物の音が、全く聞こえねぇ。それに、なんだか体がポカポカして……」


「我が特務監査部隊が誇る『福利厚生・完全空調完備の結界』です」


杖を持ったクラウスが、長い白髪を揺らして優雅に一礼した。


「極度の疲労状態にある従業員あなたたちに対し、騒音や温度変化といった外的ストレスを与えるのは、コンプライアンス(安全配慮義務)に反しますからね。……さて、防音マスキングは完璧です。これなら、外で多少『大きな音』が鳴っても、あなたたちの安眠(有休消化)を妨げることはないでしょう」


クラウスが結界の強度を確認し、背後に立つ赤髪の女騎士へと視線を送る。


「アレン先生。対象(ブルーカラーの皆様)の保護および、労働環境の確保(セーフティネット構築)が完了しました」

「完璧なバックオフィス(後方支援)です、クラウス」


アレンは純白のスカーフを揺らし、満足げに頷いた。


「ではエルザ。本ルートにおける『物理的障害バグ』の除去作業を開始してください。……ただし、彼らの馬車の車軸を直して再び出発するため、街道の路面を傷つけるのはNG(禁止)とします」


「……路面を傷つけずに、五十匹の魔物を殲滅しろと? ふっ、上官からの要求ノルマが、三年前に比べて随分と厳しくなっているな」


エルザは口元に好戦的な笑みを浮かべながら、ゆっくりと一歩、前へ出た。

彼女は結界の外――魔物がうごめく危険地帯へと単身で歩み出ると、腰に帯びた大剣の柄に静かに右手を添えた。


かつて王国最強と謳われた第一騎士団の千人長。

その武力は三年前の時点でも規格外だったが、アレンの下で「無駄な疲労(残業)」を削ぎ落とし、完全な休息と合理的な訓練を重ねた現在の彼女は、もはや人間の枠を完全に超越しつつあった。


「グルルルルル……ッ!」

「ガァァァァァッ!」


結界から出てきた「生身の餌」を見つけ、五十匹の暴食狼が一斉にエルザに向かって殺到する。前後左右、完全に退路を塞いだ波状攻撃。


しかし、エルザは剣を抜くことすら急がない。


「労働時間を無駄に長引かせるのは、三流の仕事だ。……一瞬ワン・ストライクで終わらせる」


エルザの瞳が、スッと鋭く細められた。

直後、彼女の周囲の大気が、異常な魔力密度によって陽炎のように歪み始める。


「――第一騎士団式・抜刀術【物理的除雪ルート・クリアリング】」


シュンッ……!!


エルザが大剣を『横薙ぎ』に振り抜いた、ただそれだけだった。

しかし、その洗練され尽くした一振りから放たれたのは、極限まで圧縮された「真空の刃(衝撃波)」であった。


ドゴォォォォォォォォォンッッ!!!


結界の内側にいるリックたちの足元すら大きく揺れるほどの、圧倒的な衝撃。

エルザの剣閃から放たれた不可視の刃は、扇状に広がりながら、襲いかかってきた五十匹の暴食狼たちを、文字通り『一瞬にして』消し飛ばした。


血飛沫すら上がらない。圧倒的な質量を持った衝撃波が魔物たちを森の奥深くへと吹き飛ばし、同時に、街道を覆っていたぬかるみや倒木、邪魔な岩のすべてを、綺麗さっぱり「薙ぎ払って」しまったのだ。


「……なっ、あ……っ?」


リックは、結界の中からその光景を見て、ただ口をパクパクとさせることしかできなかった。

数秒前まで、五十匹の魔物がひしめき合っていた絶望の森。

それが今や、魔物どころか、街道のぬかるみや障害物すら完全に消え去り、まるで『王都の舗装された大通り』のように、見渡す限りの真っ平らな美しいハイウェイが形成されていたのである。


「ふむ。路面の舗装レベリングも完璧だな。これで馬車の車輪に余計な負荷ストレスがかかることもないだろう」


エルザは一切の乱れもない呼吸で剣を鞘に納め、満足げに頷いた。


「素晴らしい業務効率(生産性)です、エルザ殿。これなら、残業代(追加予算)を申請される心配もありませんね」

アレンが拍手を送りながら、結界を解除して歩み寄ってくる。


圧倒的すぎる。

これが、特務監査部隊。軍の腐敗将校たちが「白き悪魔」と恐れて震え上がる、最強の社畜たちの武力。

ディラン司令官が「護衛の兵士など無駄なコストだ」と切り捨てた現場の安全を、彼らはたった数秒で、文字通り「物理的」に解決してしまったのだ。


「あ、あんたたち……一体、何者なんだ……っ」

リックが震える足で立ち上がり、掠れた声で問いかけた。


「ただの監査官ですよ。さて、魔物の駆除(ルート開拓)は終わりました。次は崩壊したインフラ(馬車)の修復です。……エルザ、ジャッキアップを。クラウス、代替部品の生成モデリングを」

「承知した」


エルザが横転した重さ数トンの巨大な荷馬車に片手を添え、「ふっ!」と気合を入れると、馬車はいとも簡単に持ち上がった。

そこへクラウスが杖を振り、空気中の水分と魔力を超高密度に圧縮して、鋼鉄以上の強度を持つ『絶対氷の車軸』を瞬時に精製し、壊れた部分へと完璧に組み込んでいく。


わずか数分。

完全に大破したと思われていた荷馬車は、前よりも頑丈で、しかも摩擦抵抗ゼロの滑らかな車軸を持った「最新鋭の馬車」へと生まれ変わってしまった。


「うそだろ……。軍の整備班でも、こんな修理には丸一日はかかるぞ……」

ベテランの輸送兵たちが、信じられないものを見る目で馬車を撫で回している。


「インフラの修繕メンテナンスは完了です。……さあ皆さん、温かいコーヒーと、携帯用の栄養食を用意しました。胃に負担がかからないよう、少しずつ食べてください」


アレンが魔導保温ポットから、湯気を立てるコーヒーをカップに注ぎ、輸送兵たちに手渡していく。


「あ……ありがとうございます……っ」


リックが震える両手でカップを受け取り、一口すする。

温かい液体の感触と、コーヒーの豊かな香りが、五日間一睡もせずに冷え切っていた彼の体に、ジワリと染み渡っていく。


「う、うぅ……っ。うわぁぁぁぁっ……!」


コーヒーの温もりに触れた瞬間、リックの目から大粒の涙が溢れ出した。

それは、他の輸送兵たちも同じだった。彼らは道の真ん中でへたり込み、泥だらけの顔をくしゃくしゃにして、子供のように泣きじゃくった。


死の恐怖から解放された安堵。そして何より、「誰かに自分たちの命(労働環境)を大切にしてもらえた」という、当たり前で、けれどこの数ヶ月間ずっと奪われていた『人間としての尊厳』を取り戻した涙だった。


「……アレン中隊長」

その光景を見ていたティノが、王都から通信魔道具インカムを通じて、静かに、そして怒りを込めた声を送ってくる。


「彼らから、安全と休息を奪い、精神論だけで死地に追いやったディラン司令官の罪は……極めて重いです」

「ええ、分かっています」


アレンは輸送兵たちの背中を優しく撫でながら、冷たく澄んだ声で告げた。


「リックさん。そして輸送部の皆さん。……もう、無理をして馬を走らせる必要はありません。あなたたちには、生命の危機を伴う不当な業務命令を『拒否ストライキ』する絶対的な権利コンプライアンスがあるのです」


「……命令を、拒否する……? でも、それじゃあ物資が運べない。俺たち、軍法会議にかけられて……」

リックが不安げにアレンを見上げる。


「責任は、すべてバックオフィスが取ります」


アレンはキッパリと言い切った。

十八歳の青年の、どこまでも深く、頼もしいその言葉に、輸送兵たちはハッと息を呑んだ。


「王都へ物資を運ぶ必要はありません。……ここから数キロ先に、軍が所有している『第十四中継倉庫』がありますね? まずはそこへ向かい、屋根のある場所で、泥のように眠りなさい」


アレンの指示に、輸送兵たちは互いの顔を見合わせ、そして力強く頷いた。


「わ、分かりました……! 俺たち、特務監査部隊の指示に従います!」


「正しい判断グッド・ジャッジです。……さて」


アレンは立ち上がり、進行方向――森の奥にある『中継倉庫』の方角を、氷のように冷たい目で見据えた。


「ティノ。あなたが指摘した、ディラン司令官が民間(ダミー会社)に莫大な家賃を払って維持しているという『軍事中継倉庫』ですが……。本当にそれほどの『価値』がある不動産なのか。我々の厳しい目で、直接『実地査定デューデリジェンス』させてもらいましょうか」


アレンの言葉に、通信機越しのティノが「了解しました」と力強く答える。


無能なトップの精神論によって崩壊しかけていた現場のインフラは、最強の特務監査部隊によって守り抜かれた。

次は、いよいよバックオフィス(経理と不動産)の闇を暴き、中抜き貴族の息の根を止める「逆ロジスティクス(物流遮断)」の準備へと移る。


最強の社畜と、覚醒したブルーカラーたちの反撃が、ここから静かに、そして確実に始まろうとしていた。

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