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異世界転生してパワハラ上司を駆逐してたらいつの間にか偉くなってた  作者: ぽてと
第七小隊の労働環境改善〜最強の社畜による軍隊ホワイト化計画〜

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第30話 お忍び王女の介入と、新たなる小隊長の誕生【第一章完結】

アレンの放った『物理的監査』の一撃によって、バッカス・モンスターは完全に粉砕された。

装飾鎧の破片が石畳に散らばり、大通りに静寂が落ちる。


直後、事態を見守っていた市民たちの中から、割れんばかりの歓声が沸き起こった。


「す、すげえっ! あんな小さな少年兵が、一撃で化け物を倒しちまったぞ!」

「第七小隊だ! 掃き溜めなんかじゃない、彼らは王都の英雄だ!」


歓喜の波が押し寄せる中、アレンは上着を貸してやったティノの頭を軽く撫でていた。


「ア、アレン……僕、その、ごめんなさい。ずっと、男だってみんなを騙していて……」

「騙していたなどと気にする必要はない。君が優秀なバックオフィスの人材であることに変わりはないんだから。それに、女性だと申告しづらい職場環境を作っていた組織側にすべての責任がある」


アレンのブレない社畜的フォローに、ティノは涙ぐみながら「うんっ……!」と力強く頷いた。彼女の『僕』という一人称も、もはや部隊の誰一人として気にする者はいなかった。


その和やかな輪の中へ、不意に、周囲の喧騒とは異質な『凛とした声』が響き渡った。


「あらあら。王都のメインストリートで、随分と派手な立ち回りを演じてくれたものね」


群衆が自然と道を空ける。

そこに立っていたのは、深めのフード付きマントを羽織った、一人の美しい少女だった。

護衛の騎士らしき大柄な男を背後に従え、優雅な足取りで近づいてくる。身なりこそ目立たないようにしているが、その立ち振る舞いから溢れ出る圧倒的な気品とカリスマ性は、隠しきれるものではなかった。


「なっ……ヴィ……!」


彼女の顔を見た瞬間、第一騎士団のエルザが息を呑み、慌ててその場に片膝をつこうとした。


「しっ。今日はただのお忍びの視察よ、エルザ」


少女は人差し指を口元に当て、悪戯っぽく微笑んでエルザの言葉を遮った。

彼女の名はヴィクトリア。この王国の次期女王として最も有力視されている、王族の第一王女その人である。優秀な騎士であったエルザとは、以前から顔見知りの間柄だった。


「お久しぶりね、エルザ。第一騎士団から外れたと聞いて心配していたけれど……随分と良い顔(目)に戻っているじゃない。で、この騒ぎは一体何事かしら?」

「はっ。お恥ずかしながら……あの倒れている男は、私の告発によって国家反逆罪が確定した第七小隊の元小隊長です。ヤケを起こして禁断の秘薬に手を出し、この有様に」


ヴィクトリアの視線が、白目を剥いて倒れているバッカスを一瞥し、そして、アレンへと向けられた。


「なるほど。あの醜悪な怪物を、あなたが倒したのね? 素晴らしい剣技……いえ、魔法かしら?」

「いいえ、ただの『論理的な業務遂行』です、お嬢様」


アレンは相手の正体に気づかないふりをしながら、首元のスカーフを整え、完璧なビジネススマイルで一礼した。相手がどう見ても『超特大のVIPステークホルダー』であることは、長年の社畜の勘が告げていた。


「この結果は、僕個人の武力ではありません。クラウスのシステム構築、レノのリサーチ、ティノと新人たちによるバックオフィス、そしてエルザ殿の強力な前衛。そのすべてが最適に噛み合った『組織力』の賜物です」


「組織力……」

「はい。誰も不当に傷つかず、誰も理不尽な犠牲にならない。適切なマネジメントさえあれば、組織は本来、これほどの成果パフォーマンスを出せるのです」


ヴィクトリアの美しい瞳が、驚きに見開かれた。

武力や個人の英雄性を尊ぶこの王国において、「誰も死なせない組織論」をこれほどまでに堂々と、かつ結果で証明してのけた同年代の少年など、彼女は見たことがなかった。


「……ふふっ。あはははっ! 面白い、本当に面白いわね、あなた!」


ヴィクトリアは声を上げて笑った。その笑顔は、王族としての作り物ではない、年相応の最高に可愛らしい笑顔だった。


「アレン、と言ったかしら。あなたのその『ホワイトな組織論』、とても興味深いわ。いつか必ず、またゆっくりお話を聞かせてちょうだいね」

「ええ。事前のアポイントメントをいただければ、いつでも対応いたしますよ」


ヴィクトリアは満足げに頷くと、護衛と共に群衆の中へと消えていった。

こうして、王都を揺るがしたバッカスの反逆事件は、アレンたち第七小隊の圧倒的な成果とともに幕を下ろしたのだった。


ーーそれから、数日後。


第七小隊の執務室は、見違えるように綺麗に清掃され、清々しい朝日が差し込んでいた。

バッカスは正式に軍法会議にかけられ、すべての財産と階級を剥奪された上で、極寒の北の強制労働施設へと送られた。彼に協力していた上層部の人間も、ヴィクトリア王女の(裏からの)強烈な後押しにより、一掃されることとなった。


そして空席となった第七小隊の小隊長には、異例の飛び級で、アレンが正式に任命されることとなった。


「アレン小隊長! 本日の業務タスクの整理、完了しましたっ!」


新しい、そしてサイズのぴったり合った女性用の軍服に身を包んだティノ(彼女は本名であるティアナと名乗ることも考えたが、慣れ親しんだティノのままでいくことにしたらしい)が、元気よく敬礼する。


「ご苦労様、ティノ。……ん?」


アレンが書類に目を通そうとしたその時、執務室のドアがノックされ、一人の女性が入ってきた。

銀色の甲冑を身に纏った、エルザである。


「おはよう、アレン。いや……アレン小隊長」

「エルザ殿? 第一騎士団に復帰したはずでは?」


アレンが首を傾げると、エルザは一枚の書類をアレンのデスクに提出した。


「『降格異動願い』だ。先ほど、上層部に受理させてきた。……腐敗したエリート部隊に居座るより、お前の作る正しい組織の下で働く方が、私の正義を有意義に使えると判断してね」


エルザは照れ隠しのように髪をかき上げ、キリッとした表情でアレンに向き直った。


「今日から私は、あなたの部下だ。規律管理者として、この部隊の前衛は私が引き受けよう」

「にゃはは! エルザもすっかりアレンのやり方に毒されたにゃ!」

「毒ではありません、レノ。極めて論理的で健全なキャリアチェンジですよ」


天井の梁から顔を出したレノと、計算式から顔を上げたクラウスが笑う。

新人兵士たちも、頼もしい第一騎士団の元千人長の加入に、歓声を上げて喜んだ。


「……歓迎しますよ、エルザ。これからは共に、この王国軍最大の『ホワイト部署』を作り上げていきましょう」


アレンは席から立ち上がり、窓の外の青空を見上げた。

前世で過労死した社畜の少年が、異世界の落ちこぼれ部隊を最高のホワイト組織へと変革していく物語。その第一歩は、今、完璧な形で踏み出されたのだ。


アレンは懐中時計を取り出し、パチンと蓋を閉じた。


「さて、時刻は十七時。本日の業務タスクはすべて終了です」


アレンの言葉に、第七小隊の全員が最高の笑顔で頷く。


「皆さん、定時退社あがりにしましょう!」

第一章、これにて完結となります!

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


相変わらず現実のブラックな職場で感じる日々の鬱憤を、主人公のアレンにすべてぶつけて暴れてもらいました。


もし「アレンの社内風土をぶっ壊していく感じが面白かった!」「バッカス成敗がスカッとした!」と思っていただけましたら、**ページ下部にある【☆☆☆☆☆】での評価や、【ブックマーク】**をポチッと押して応援していただけると、作者の明日の出勤(と執筆)のモチベーションが爆上がりします!何卒よろしくお願いいたします!


次回、第二章は一旦の充電期間をいただき**【5月1日】**よりスタートを予定しております。

次期女王ヴィクトリアとの絡みや、新たなるブラック環境への出張監査(?)など、アレンたちの更なるホワイト化計画をお楽しみに!

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