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異世界転生してパワハラ上司を駆逐してたらいつの間にか偉くなってた  作者: ぽてと
第七小隊の労働環境改善〜最強の社畜による軍隊ホワイト化計画〜

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第17話 不良在庫へのすり替えと、定時退社の死守

夜の帳が下り始めた第一倉庫。僕たち第七小隊のメンバーは、極秘の『すり替えオペレーション』を迅速に進行していた。


「アレン、この木箱に入っていたのは全部、王国軍の新品の業物だよ。剣が二十本に、ミスリル製の軽量鎧が五着……これだけで銀貨数百枚の価値はあるはずだよぉ」


ダボダボの軍服の袖をまくり上げたティノが、手元の台帳と現物を照らし合わせながら報告してくる。彼女の正確な検品スキルのおかげで、バッカスが横流ししようとしていた『本物の資産』は、すでに小隊の正規の保管庫の奥深くへと移し替えられていた。


「よくやった、ティノ。で、空になった木箱には予定通り、あらかじめ用意しておいた『不良在庫デッドストック』を詰め込んだな?」

「うんっ。刃こぼれして使い物にならない鉄くずと、ただの石ころを詰めておいたよ」


ティノは胸を張って答える。しかし、ただゴミを詰めただけでは、木箱を持ち上げた瞬間に重量の違和感で密輸業者にバレてしまう。

そこで出番となるのが、我が小隊が誇る魔道エンジニアだ。


「クラウス、重量の偽装工作カモフラージュはできているか?」


「ご安心を、アレン先生。指定された武具の総重量と、現在詰め込まれている鉄くずの質量の差分を計算し、木箱そのものに『重量増加の定数』を付与するマクロを組み込んでおきました。誰が持ち上げても、中身が新品の武具であると錯覚するはずです」


銀縁眼鏡を押し上げながら、クラウスが誇らしげに語る。

彼の魔法はもはや破壊兵器としてだけでなく、こうした緻密なシステム偽装にも応用できるようになっていた。素晴らしい技術の無駄遣い……いや、柔軟な応用力だ。


「完璧な仕事だ。これで僕たち側のタスクは完了。あとはこの不良在庫が詰まった木箱を指定の荷馬車に積み込めば、僕たちの『運搬準備』という業務は定時内で終了となる」


僕たちは手際よく、てこの原理を利用して重い(ように偽装された)木箱を荷馬車へと積み込んだ。

時計の針は、ちょうど終業時刻を指そうとしている。突発的なサービス残業の強要に対し、僕たちは見事なチームワークで『定時退社』を死守したのだ。


「さあ、みんな。今日の業務はここまでだ。しっかり休んで、明日のタスクに備えよう」

「やったぁ! アレンのおかげで、今日もちゃんとご飯が食べられるよ!」

「先生の完璧なタイムマネジメント、今日も勉強になりました」


ティノとクラウスを労いながら、僕は視線を王都の東門の方角へと向けた。

物理的な準備は整った。あとは、現地に先行している『リサーチ担当』の腕の見せ所である。


ーー同時刻。王都の東門外にある、人気のない廃棄物処理場。


「……遅いにゃあ。王国軍のデブ将校の使い走りは、まだ来ないのかにゃ」


処理場を見下ろす高い木の上で、猫耳の少年兵レノは、ふさふさの尻尾を揺らしながら欠伸をしていた。

彼の視線の先には、黒い外套に身を包んだ柄の悪い男たちが数人、苛立った様子で荷馬車の到着を待っている。バッカスと裏取引をしている、帝国の息がかかった密売組織の連中だ。


『レノ。そっちの状況はどうだ?』

不意に、レノの耳につけられた小型の魔導具からアレンの声が響いた。クラウスが開発した、近距離用の通信デバイス(トランシーバー)である。


「アレンか。こっちの取引相手クライアントは、予定通り五人。みんなイライラしながら待ってるにゃ。そっちの荷馬車は?」

『今、雇われの御者を出発させた。中身はただの鉄くずだが、外見と重量は完璧に偽装してある。君のタスクは、奴らが中身を確認した瞬間の「絶望的な反応」をモニタリングすること、そして……』

「分かってるにゃ。『細工』のことだろ?」


レノはにやりと笑い、懐から一つの小瓶を取り出した。


「バッカスのオッサンの信用を地に落とすための、ちょっとしたスパイスだにゃ。オレの隠密スキルにかかれば、奴らの馬車にこれを忍び込ませるくらい、あくびが出るほど簡単なタスクだにゃ」


レノが手にしているのは、アレンから渡された『激臭を放つ魔物の分泌液(超濃縮版)』だった。これを取引相手の荷馬車に少しでも付着させれば、数週間は鼻がひん曲がるような悪臭が取れず、密売人としての隠密行動など不可能になる最悪のデバフアイテムだ。


「アレンの考える嫌がらせは、本当にえげつないにゃ。……でも、終わったら最高級のマタタビ玉をもらえるんだから、しっかり働くにゃ」


レノは音もなく木から飛び降り、闇夜に溶け込んだ。

密売人たちがバッカスの手配した荷馬車を迎え入れ、意気揚々と偽装された木箱を開けるまで、あと数分。

第七小隊による、理不尽な上司への『サプライチェーン分断作戦』の最終フェーズが、静かに幕を開けようとしていた。

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