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異世界転生してパワハラ上司を駆逐してたらいつの間にか偉くなってた  作者: ぽてと
第七小隊の労働環境改善〜最強の社畜による軍隊ホワイト化計画〜

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第16話 突発的な残業命令と、横流し品のサプライチェーン

レノがバッカスの裏帳簿を確保してから数日後。


僕たち第七小隊の執務室に、小隊長であるバッカスが忌々しそうな顔で現れた。

彼は僕と目を合わせないようにしながら、分厚い書類の束をティノのデスクに乱暴に叩きつけた。


「おい、新人ども。今日の業務終了後、夜間特別任務を命じる」


バッカスの言葉に、ティノがビクッと肩を揺らした。

僕は作業の手を止めず、極めて事務的なトーンで問い返す。


「夜間任務ですか。事前のスケジュールには組まれていなかったはずですが、緊急の出撃要請でも?」

「口答えをするなっ! これは上官命令だ。第一倉庫の奥にある『廃棄予定の古い武具』を木箱に詰め、今夜中に王都の東門外にある指定の処分場まで運搬しろ。いいか、これは極秘の処分任務だ。誰にも見られず、お前たちだけで静かに運べ」


バッカスはそれだけを一方的に捲し立てると、逃げるように執務室から立ち去っていった。


「夜間に重い木箱を街の外まで運ぶなんて……そんなの、朝までかかっちゃうよぉ」


ティノが涙目で書類の束を見つめる。

突発的なタスクの押し付け。しかも、本来の業務時間を大幅に超える深夜の肉体労働だ。前世の言葉で言えば、絵に描いたような『違法なサービス残業』である。

だが、僕の意識は残業そのものよりも、彼の命令の不自然な点に向いていた。


「……レノ。今の話、どう思う?」


僕が誰もいないはずの天井の梁に向かって声をかけると、ふらりと猫耳の少年が逆さまにぶら下がって顔を出した。


「怪しすぎるにゃ。オレが調べた裏帳簿の記録だと、今夜はちょうど、例の『帝国の商人』と繋がっている密売組織との取引日になっているにゃ。東門の外にある処分場っていうのは、奴らのアジトのすぐ近くだにゃ」


「なるほどな」


僕は首のスカーフを軽く撫でながら、冷たく笑った。


「つまり、バッカス小隊長は廃棄品と偽って、横流しする予定の良質な軍需品を僕たちに運ばせようとしているわけだ。自分は安全な場所にいて、僕たちをコンプライアンス違反(密輸)の運び屋として利用する気らしい」


「ええっ!? そ、そんなの犯罪だよ! 僕たち、捕まっちゃうよ!」


ティノがパニックになりかけるが、僕は彼女の肩をぽんと叩いて落ち着かせた。


「安心しろ、ティノ。僕がそんな理不尽な残業と犯罪の片棒を許すはずがないだろう。……クラウス、ちょっといいか」


僕は部屋の隅で魔力効率の計算をしていたクラウスに声をかけた。


「はい、アレン先生。どのようなご用件でしょうか。敵対勢力の拠点を、私のマクロ魔法で更地に変えてきましょうか?」

「いや、そこまでの物理的破壊はまだ必要ない。バッカス小隊長には来月の『国境任務』で本命の監査を受けてもらう予定だからな。だが、今日のように調子に乗って理不尽な残業を押し付けてくるなら、少しばかり『教育』が必要だ」


僕は三人をデスクの周りに集め、羊皮紙に簡単な図を描き始めた。


「いいか。今回の僕たちの目的は三つだ。一つ、横流しされるはずの良質な武具を小隊の在庫として確保すること。二つ、密売組織との取引を妨害し、バッカスに多大な金銭的損害ストレスを与えること。そして三つ……」


僕はペンを置き、ニヤリと笑った。


「僕たちが、定時でしっかり帰って寝ることだ」


「定時退社……! なんて素晴らしい響きだにゃ」

レノが尻尾をピンと立てて目を輝かせる。


「具体的なオペレーション(作戦)はこうだ。まずティノ、君の在庫管理スキルで、運搬用の木箱の中身を『本物のゴミ』にすり替える。中身の重量はクラウスの魔法でカモフラージュしてくれ。そしてレノは、その木箱が密売組織に渡るまでの監視と、取引現場でのちょっとした『細工』を頼みたい」


三人は僕の割り振ったタスクを聞き、それぞれの持ち味を活かせる完璧な業務フローに息を呑んだ。


「さあ、第七小隊による初のチームビルディングの実践だ。バッカス小隊長の不正なサプライチェーン(供給網)を分断し、無給の残業命令を叩き潰すぞ」


「はいっ! 僕、頑張ってゴミを詰めます!」

「先生の完璧なロジック、私の魔力で必ずや体現してみせましょう」

「終わったら、またあの最高のマタタビ玉を頼むにゃ」


かつてバラバラだった落ちこぼれたちは、今や僕の『社畜的論理』のもと、ひとつの強力な組織として完全に連携し始めていた。

バッカス小隊長の小賢しい小遣い稼ぎは、今夜、彼自身の胃に穴を開ける最悪の結末を迎えることになる。

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