第7話―23 肉を喰らう者、まどか
夕食のバーベキューはなかなかのものだった。英依の急なリクエストにも即座に対応し、準備を整える弥幸の手際が底知れない。どうやら買い物のついでに草刈り機などを返却に行き、そこでバーベキュー用の道具を借りてきたらしい。その上、夏野菜も大量にいただいてきて、買ってきた肉類とともに食卓を賑わせた。
円からしたら信じられないコミュ力であるが、まあそうだよなとも思う。こんなテレビに出ていても不思議じゃないようなイケメンが、人懐っこい笑顔と態度でお宅訪問してくるのだ。ヨネスケどころの話ではない。農家の人たちもきっとイチコロだろう。出来る限りもてなしてしまうのも頷ける。その家にたまたま集まっていた近所の奥さまたちもこぞってアレコレ持ち寄ったらしい。
そんな地域住人の多大な援助のもと催されたオカ研夏の大BBQ大会であったが、始まってみれば、ただ庭で肉を焼いて食うだけである。円のイメージしていたようなパリピ感は感じられなかった。
この場には明らかに足らないものがあったのだ。それはアルコールだ。酒を浴びるように飲んで、理性のタガを外し、やっちゃいけないことをやってSNSに投稿して炎上するまでがパリピというものだろう。それなしに肉焼いたって子ども会の行事のようなものである。
円は不思議に思って尋ねてみたのだが、未成年の3人はともかくとして、上の2人も下戸であるとのこと。というか英依にいたってはまだ誕生日を迎えておらず、19歳であった。19歳 !? 彼女ら上級生が2年生であることはわかっていたことだが、英依がひとつ上⋯⋯というか大学に入学してすぐ19歳になっていた円と数字上は同じ年齢だった。
「あら?円19歳なの?」英依は驚きの表情を浮かべている円に、割り箸の先を向けながら言った。「同い年じゃない。ならもうタメ口でいいのよ、1学年差なんて誤差みたいなもんなんだから」
「いえ、それはちょっと⋯⋯」円は決して遠慮ではなく、心から全力で拒否していた。こんな人にそんな調子乗った付き合い方なんてしたら油断してやらかしてしまう。灰皿でドタマかち割られそうだ。
「なんでよぉ、もっとフランクな感じでいきましょうよぉ」酒もないのに英依が絡んでくる。円の肩に前腕を置いて、グッともたれかかってきた。
円は愛想笑いを浮かべながら、小さくなって誰かの助けを求めた。弥幸は⋯⋯凛子にまとわりつかれている。省吾は⋯⋯熱心に食べている。というか食ってるのコイツだけじゃねえか。リクエストした英依は体格の割に食が細いというか、ちょっとずつチビチビ食べている。
こうなったら自分も無心に食おう、と円は決意した。省吾のように焼いて食ってのサイクルを回し続ければ、英依もそう絡んでこないはずだ。なにが "はず" なのかわからないが、久々に働いた円のスーパーポンコツコンピューターがそう計算をはじき出した。食え!食え!と。
自分の相手はそこそこに急に網の上に食材を並べ始めた円を、英依は興味深そうに観察していた。円は省吾に対し、自分の陣地を主張している。ここから先は私のだからと、手を出すことを許さない。円なりのこだわりの焼き加減になるように目を凝らしている。
たしかに英依はもうそれ以上、円に絡んでこなかった。ひたすら肉、野菜をパクついている円と省吾のふたりを見つめながら、なにが楽しいのかフフフと微笑んだ。




