第7話―15 朝ごはんもやっぱり⋯⋯
テーブルにはすでに料理が並んでいた。メインの位置に置かれたその椀を見て、円は(フッ⋯⋯さすが)と感嘆した。
「みんななんでもいいって言ってたから、神谷さんリクエストの "ハムエッグ丼" で統一したよ〜」弥幸が声をかける。
ハムエッグ丼――ご飯の上をキャベツで覆い、マヨネーズをかける。その上にハムエッグをドーン。しょうゆを一回ししただけのシンプルな料理。しかし、これぞまさしくタモリ飯!
キャベツの量、ハムエッグの焼き方、どれも計算され尽くした完璧な仕上がりだった。円はひとくち食べてそれを看破した。弥幸に訳知り顔の笑みを向ける。するとそれに気づいた彼はウインクしながら親指を立てた。タモリスト同士、たしかに通じ合った瞬間であった。
そんなふたりの様子を意味もわからず見ていた凛子は、わからないまま危機感を覚えていた。やはりこの円という女は危険なのではないか?自分の恋敵になりうるのではないか?
下品に丼にがっついている地味で冴えない姿を見ると、とてもそんなふうには思えないのだが、やはり趣味が同じだからだろう、やけにふたり、通じ合っているような場面が見受けられる。この食事のどこにあのやり取りを交わす要素があるのか、皆目見当もつかないが、なにかがあるのだ。そしてそれは自分に足りないところなのかもしれない⋯⋯
憐れな凛子がそのような誤った物思いにふけっている間に、他の者は食事を終えていた。弥幸は省吾以外にお茶を配っている。省吾は自分で動いて白湯をもらった。遅れに気づいた凛子に「ゆっくりでいいからと」声をかけてから、弥幸は全員に向けて話し出した。
「今日の予定だけどね、涼しい午前中のうちにやっときたいことがあるんだよね」弥幸は全員の顔を見渡した。「やっぱり気になるのは "井戸" のことでしょ?見たところどこにもないんだけどさ。だからね、掘ってみようと思うんだ」
おおっ、やっぱやるつもりか!と円は弥幸を見つめた。円は荷物のなかにスコップがあることに気づいていた。それにしてもすごいクソ度胸だ。あの手の場所を無闇にいじるのは、どうも禁忌に触れるようで抵抗がある。それを敢えてやっていこうとは⋯⋯霊無能力者である弥幸ならではといったところか。コイツなら祠とかも平気でぶっ壊せるんじゃないか⋯⋯
「あっ、そういえば家の裏に祠がありましたよ」円は急に思い出して言った。
「えっ、ホントに?うわ~それ聞いてなかったなあ」弥幸は知らなかったようで本気で驚いている。「どんなの?危ない感じとかした?」
「いや、別に普通の石でできた小さいのでしたけど。苔がびっしりだったから手入れはされてなさそうでしたね」
「え〜マジか~あとで見に行かなきゃ」弥幸は少年のように目を輝かせた。「あっ、でもまずは井戸のことだけど、有明くんも掘るの手伝ってくれる?」
「わかりました」省吾はシンプルに同意した。
「ありがと~」それから女性陣に向き直って、「コリンちゃんと神谷さんはその間に映像のチェックお願いできるかな?僕のパソコンとタブレット使ってそれぞれで」
「わっかりました〜」と凛子。
円は「ウィッス」と言って首を前後に動かした。




