第7話―13 まどか、盛り上がる
「ウォー、キタキタキターッ!」思いもよらない成果に円は興奮した。元気ハツラツである。まさかこんなにも早く霊の姿を映像に収めることができるとは。省吾にアレやらせてよかった、ナイス私、と自画自賛した。
「いやあ、すごいね」弥幸もいつもより声が高い。「絶対なにか起こるって触れ込みだったけど、ここまでちゃんとしたのは初めてだと思うよ」
「もうこれだけで取材の撮れ高は十分でしょ」円は意外に抜け目のないことを言う。
「うん、この後なにもなかったとしても文句は言われないだろうね。でも⋯⋯これをそのサイトで公開したら、なんで空手なんだって思われちゃうかも。オカ研の合宿って話なのに」
「まあそこは、些細なことでしょう。ライターさんが考えてくれますよ」
「これは亡くなったご夫婦のどちらかなんでしょうか?」盛り上がるマニアふたりをよそに、省吾が考え込んでいる。
「あー、どうだろうね」円もその問いに少し落ち着きを取り戻して答えた。映像をジッと見つめる。「うーん、人っぽいってことはわかるけど、そこらへんの判別はつかないなあ」
「これってやっぱり例の "井戸" の場所だよね。この映ったのがなにかはわからないけど、あの付近になにかがあるってのは決まりだね」弥幸がそう断定する。
「カメラはここを中心にしとけばいいですね。夜中なんかあるかなあ。うわードキドキする」円はこの後を想像した。オーブどころじゃない、本物の幽霊だ。もう幾度か経験し、怖い思いもしてきたはずなのに、期待が膨らんでいく。
しかしその時、弥幸と円の背後には、気の合ったふたりの会話に割って入る余裕もない凛子がいた。あまりにもクッキリと映ったその異物に底しれない恐怖を覚えていた。
(こんなのが出るようなところに泊まるの !? え、なんでこの人たちこんなに楽しそうなの !? )凛子は青い顔でふたりを、特に弥幸を見つめた。
そんな凛子のことを見逃さないのが円だ。円は凛子に振り向いてニヤッと笑う。
「あら~コリンちゃんだいじょ〜ぶ〜?顔真っ青だよ〜」
円の嫌らしい笑みを見て、凛子の頭にカッと血が昇った。彼女の負けん気が恐怖心を上書きした。
「は?別によゆーだし。なに言ってんの?」
「あれ?そお?大丈夫ならいいんだけど。でもあんまり怖いようだったら弥幸先輩に添い寝してもらったら?」
くっ、コイツ⋯⋯円の揺さぶりは確実に凛子を追い込んでいた。正直どっちの態度を取るべきかわからない。凛子の頭は混乱する。
「あっ、そうだ、いいこと考えた!」円はまたなにか嫌がらせを思いついたようだ。「コリンちゃんさあ、アレやってよ、お得意の」
「アレ?アレってなによ?」凛子は不安を押し隠して尋ねる。
「コリンちゃんといったらアレじゃん、ほら、いつものイタコ芸。イタコリンちゃんだよ。また憑いてもらってさ、それでインタビューかなんか撮影しようよ」
「そ、そんなの出来るわけないでしょ!バカじゃないの、この、この⋯⋯バカまどか!」
そんなふたりのやり取りを苦笑しながら眺める弥幸。省吾は少し離れて静かにストレッチをしている。
合宿初日の夜はこんなふうにして更けていった。




