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空手バカ一代と行く、JDまどかの心霊探索ツアー  作者: AKTY
第6話 まどかリベンジ!―ひとりかくれんぼ編―

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第6話―エピローグ

 目を覚ましたまどかは最初自分がどこにいるのかわからなかった。しかしそれもほんの一瞬で、身体の、特に首筋のあたりの違和感が彼女の脳を覚醒させた。そうなった原因である窮屈な場所での睡眠、そうだ自分はいまクローゼットの中にいるのだ。


 暗闇のなか手探りでスマホを探す。それはすぐそば、円の股の間に落ちていた。電源ボタンを押すと、時間は朝の6時過ぎ。LINEのアプリが起動したままだった。


 途中で寝落ちしちゃったか⋯⋯有明くんに悪いことしたな、と円は少しだけ反省し、それにしても結局なにも起こらなかったなあと残念に思った。


 ああ、いけないいけない、儀式を終わらせないと。円はそう思い立って、少し離れた位置に置いておいたコップに手を伸ばす。塩水を口に含むと、クローゼットからノロノロ這い出た。


 窓から入ってくる日の光で部屋はすでに明るい。オカルト的にはムードに欠けるが、遊びといえどちゃんと全うするのが作法というものである。口の中の塩水をうがいするように左右に転がしながら円は階段を下りていった。


 リビングのテレビでは朝のニュース番組が流れていた。円はそれを一瞥もせず、まっすぐ風呂場へ向かった。開けっ放しの扉からは浴室の様子が丸見えだった。そこには夜中に円がナイフをぶっ刺したそのままのコリン人形が転がっていた。


 円は人形にコップの塩水の残りを浴びせ、さらに口に含んだ塩水も吐きかけた。そうして――


「私の勝ち」と気のない声で3回唱えた。


「はあぁ」円はため息をついた。期待外れにもほどがある。せっかくいい感じの人形用意して、霊に好かれることには定評のあるキラキラ☆ギャルの名を与えたというのに⋯⋯


「コリンたいしたことねえな」円は理不尽な文句を呟いた。「あいつダメだ。まだまだだわ」


 リビングに戻り作動中の定点カメラを止めた。この分じゃこっちも期待薄だろうなと円は思った。そうなるとこれから映像を確認しなければならないのが億劫で仕方なかった。


 その時、ピンポーンとチャイムが鳴った。こんな早朝から来客か?と身構える。当然のことながら円にはそれに対応するつもりはない。ご近所付き合いなんか面倒くせえ。この時間ならもしなにか咎められたとしても寝ていたと言えば済む話だ。


 しかしチャイムは鳴り止まない。連打はされないが、一定の間隔で繰り返される。円は一応確認だけしておこうと、玄関を見渡せる場所にある窓のカーテンをそっとめくった。


 そこに立っていたのは、円にとっておなじみの人物、有明省吾ありあけしょうごだった。


 妙にソワソワしている省吾を見て、円は混乱していた。なぜここにヤツがいる?しかもこんなに朝早くから。ぜんぜん意味がわからない。


 とにかく円は大急ぎで玄関の扉を開いた。


「あっ、神谷さん、無事だったんですね!」省吾は思わず飛び出したという感じの大きめの声量で言った。


 おいおい早朝だぞ、声のボリューム考えろよ。ご近所さんに体裁悪いだろうが。円はそう思いながら、いつになく緩みきった省吾の顔を眺めた。


「どうしたの?有明くん、こんな時間に」つい冷たい調子で問いかける。


「いえ、急に電話が切れてしまったので、なにかあったのではないかと思って」


 円はハッとして省吾を見つめた。彼はいかにも着の身着のままといった様子だ。いつもの空手着姿よりはマシだが、遠出するような格好でもない。さらに円は省吾の後ろにロードバイクがあることに気がついた。


「えっ、もしかしてチャリで来たの?」


「ああ、はい」省吾はちょっと振り向いて愛車に目をやってから答えた。


「え、でも有明くんの家って別に近くじゃないよね?前迎えにいったコンビニのとこでしょ?」あそこからここまで自転車で?そんなまさか⋯⋯


「はい」省吾はなんでもないことのように返事をした。


「でもうちの住所は教えてなかったじゃん。どうやってわかったの?」


「目印のガソリンスタンドは以前聞いていたので、その近くの家の表札を1軒ずつ確認していきました。神谷さんがよくある名字じゃなくてよかったです」


 省吾が自分を心配してそこまでやってくれたことはわかっているが、円は正直ドン引きしていた。まだまだこの空手バカの行動力を甘く見ていたようだ。こいつはいつだって自分の理解の範囲をサラッと更新してきやがる。


「それじゃ、大丈夫みたいなんで帰りますね」省吾はそう言って軽く頭を下げると身を翻した。


 円はロードバイクにまたがろうとする省吾を見てプフッと吹き出した。


「ちょっと、ちょっと待ってよ有明くん」円は笑いをこらえながら引き止める。「せっかく来たんだからお茶くらい飲んでってよ――ていうか朝ごはんだね、用意するからいっしょに食べよう」


 夜中、というかもう明け方に全力で自分を助けに来てくれた友だちを円は家に招いた。そうだ朝メシ作ってる間、コイツにカメラのチェックをやらせとこう。そんなこと思いながら円は躊躇っている省吾の手を引っ張った。


 第6話 了



あとがき


 ここまで読んでいただきまして誠にありがとうございます。 


 前回ちょっと長くなった反省から今回は元のペースに戻しましたが、かわりになにも起こらないというね、ホラー小説を銘打っているものとしてはあるまじき暴挙に出てしまいました。


 まあこのバカまどかに恐怖を期待している方はいらっしゃらないでしょうから、問題ないですかね。


 今回のテーマとして「省吾をビビらせる」ってのがありまして、ただコイツは普通にオバケと対峙しても怖がることはありませんので、こういう形になりました。他だと英依先輩とタイマンはるくらいしかないんで、それはさすがにちょっとね。


 友だちに危険が迫っていても自分は手も足も出せないという状況が省吾を追い込みます。それで追い込まれてしまうこと自体、彼が人間的に成長していっている証だと思います。


 さて、次回ですが、なんか弥幸が勝手にペラペラと喋っていましたね。あのように言ってくれちゃったからにはその方向で考えざるを得ないでしょう。お前が書いたんだろって話ですが、実感としては弥幸が勝手にそう言ったって感じなんですよねえ。まあ考えてみます。


 あ、あと今回はもうひとつ番外編的な話を用意してますんで、まずはそちらをお楽しみください。


 みなさまのコメントやブックマーク、ポイント評価などが創作の励みとなっています。今後ともご愛顧のほどよろしくお願いいたします。



 AKTY



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