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空手バカ一代と行く、JDまどかの心霊探索ツアー  作者: AKTY
第6話 まどかリベンジ!―ひとりかくれんぼ編―

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第6話―7 まどかの晩ごはん

 目を覚ますと周囲は薄暗くなっていた。時計を見ると19時を少し回ったところ。やはり実家の自分の部屋ということで居心地がよかったのだろう、仮眠にしては寝すぎた気がした。


 とりあえずハムスターの様子を確認する。夜行性の動物なだけに少しは姿を見せるかと思ったが、まどかが見ている間は3匹とも顔を出さなかった。餌も水もあるし、床材もきれいに見えたので、そのまま放置することにした。


 次に夕食でも摂ろうと台所をゴソゴソあさる。冷蔵庫の中には材料がいろいろあったが、結局面倒なのでカップラーメンをチョイスした。円好みのガッツリ系はなかったが、まあ仕方がない。今日のところはシーフードで我慢しておこう。


 湯を沸かし、カップの内側の線に少し満たない程度まで注ぐ。思いついてそこに生玉子を割り入れる。円流の長い待ち時間、彼女は省吾しょうごへメッセージを送った。


「いまなにしてる?」


 すぐに返信があった。


「家でUFCの動画を見ていました」


 ん?UFCってなんだ?まあどうせ空手関係のなにかだろ。そう思ってスルーした。


「私いまからゴハン

 ビデオ通話試したいからやってみていい?」


 円は返事を待たずにビデオ通話の操作を行った。省吾はすぐに出た。


「ああ、大丈夫みたいだね」画面に映った省吾の顔を見て円は言った。「ちょっと有明くん、顔デカくない?近すぎじゃね」


 言われて省吾はスマホとの位置を調整した。画面には普段となんら変わらない円の地味な顔が映っている。


 たしか円は大学入学時に化粧を覚えたはずだが、自宅での寝起きの顔を省吾が見慣れているのはどうしたことだろう?さてはこのふたり⋯⋯


 まあこんなこと謎でもなんでもない。円が面倒になって日頃から化粧をサボっていただけだ。


「これでどうですか?」省吾は律儀に確認を取った。


「うん、ちょうどいいと思うよ」円は画面に目を向けることもなくそう言った。いまはカップ麺の状態を確認している。「おっ、できたできた。じゃあちょっと失礼してゴハン食べるね」


 いまさら失礼もなにもないが、円が遠慮なく麺を啜る音が響く。省吾はスマホの画面をジッと見つめて待っていた。


「ちょっと有明くん、通話なんだからなにか話してよ。こういうのは会話のキャッチボールが大事なんだよ」円は食べるのを中断して省吾を指導する。


 偉そうなことを言っているが、円自身、母親といとこのお姉ちゃん以外と通話したことはなかった。そもそもいきなり食事を始めてキャッチボールを止めたのは彼女だ。


「ああすいません、慣れていないもので」円の勝手な言い分にも省吾は謝罪してしまう。そういう態度が円をますます増長させるというのに。


「とりあえずさ、これで準備はバッチリだよ。ひとりかくれんぼのスタートは夜中の3時だからね、それまではゆっくりしといてよ。あっ、ちょっと待って⋯⋯」円は言い終えると席を立って画面の外に消えた。


 省吾はおとなしく円の帰りを待った。その間もスマホの画面から目を逸らすことはなかった。しばらくすると円は再び画面内に現れた。手にはラップでくるまれたなにかを持っている。


「ゴメンゴメン、ちょっとね、冷蔵庫から冷ご飯持ってきたよ」言いながら円はラップを開きカップ麺にそれを投入した。「やっぱシーフードには白飯だよね」


 円の食生活は省吾にとってなかなかの衝撃だった。空手を人生の第一に据えている省吾は、身体づくりのためにインスタント食品の類をほとんど食べない。ラーメンなど前に食べたのがいつだったか思い出せないくらいだ。


 そんな省吾の見守る前でカップ麺にご飯を入れ、汁を最後の一滴まで飲み干す円。先ほど話せと円に叱られたばかりだが、省吾は言葉が出なかった。無言のまま彼女が食事を終えるのを待った。


「は〜食った食った」円は満足げにそう言って手の甲で口を拭った。「あ、ゴメンね、ひとりで食べちゃって。有明くんはもうゴハン食べたの?」


「ああ、はい、済ませました」


「ふ~ん、なに食べた?」


「鶏のむね肉とブロッコリーをレンジで調理したものと、あとご飯です」


「へ〜身体にはよさそうだね」円は気のない感想を口にする。「まあいいや、とりあえずこんな感じで実況するからさ、有明くんも付き合ってね」


「あっ、はい」


「じゃあ、始める前にまたメッセージ送るから、仮眠でもしててよ。てことでまたあとでね〜」そう言って円は通話を切った。



 嵐のような時間だった。省吾は自分のなかに生じた戸惑いを整理できずに固まっていた。唐突に始まり、唐突に終わった円とのビデオ通話。いや、これは円の晩メシ実況とでも言うべきだろう。


 省吾はこれまで感じたことのない、なにやら名状し難き不思議な感覚をその胸のうちに抱いていた。



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