第6話―6 まどか、帰省する
翌日から円は夏休みを自分らしく満喫した。不定期に起きて不定期に寝る。その間にネットを中心にオカルト関連のものをあれこれ摂取する。思えばここ数年間の長期休暇の過ごし方は全部これだった。違いといえばひとり暮らしの部屋でそれをやっていることくらいか。
いっそ実家に帰ってしまえば衣食住すべて母親任せにできて楽なのだが、なんとなくそうしたくはなかった。この、誰からも干渉されることのない自由を手放すつもりはなかった。
そういえば借りてきたカメラの操作に関してもいまや習熟していた。ちょくちょく触って機能を確認した。試しに一晩自分が寝ている姿を撮影しもした。寝ている時になにか珍しいものが映らないかと期待したが、寝ぼけた自分がふらふらトイレに起きた場面が映っていただけだった。
などとやっているうちに土曜日はやってきた。母親が朝出発するときに念押しするように長文のメッセージを送ってきていた。円はそれに適当に返信し、約束通り昼前には着くように家を出た。
実家に着くとまずはハムスターの様子を確認した。両親は出発する前にしっかり面倒を見たようで、特にやることはない。どのケージのハムスターも巣にこもりっぱなしで、円に顔も見せなかった。「愛想のないヤツらだ」とろくに愛想など振りまいたことのない人間が毒を吐いた。
円自身もそれからは巣にこもり、とりあえず儀式の下準備を始めた。ヌイグルミは100均で買っておいた。別に人形のデザインはなんでもいいのだが、店で目鼻口もなにもない素体を見つけて、これだ!と飛びついた。本来はそれで自分好みのヌイグルミを作ったりするのだろうが、その無機質な感じがなんとなく呪術っぽくて円のお眼鏡にかなった。
正式な "ひとりかくれんぼ" の様式をネットであらためて確認しながら、規定のものを人形の腹の中に詰め込み、傷痕を赤い糸で縫い閉じる。それから糸の残りでぐるぐる巻きにした。実に哀れな人形が完成し、円は満足してフフンと笑った。
あとはカメラの映像を確認しながら設置場所を検討した。やはり風呂場で人形の動向を撮影するべきか?いや、別にチャッキーみたいに動き出すって話でもないしなあ、などとしばらく悩んだ結果、オーソドックスにリビングに設置することにした。ドアを開放して風呂場へ通じる廊下も撮影できるように調整した。
やりながらカメラ何台かあればこんな悩まなくてもよかったのになと思った。あんな物量を原付で運ぶことなどできなかったのだが、なんとなく後悔してしまった。そしてその一方で、弥幸ならいまからでも頼めば持ってきてくれるのではないかと思いついた。
もちろんそんなことはしないのだが、あのイケメンを自分が顎で使うさまを想像する。しかもそのことをあのキラキラ☆ギャルに教えてやったらどうなるだろうか?腹黒い妄想が膨らんでいった。コリンが真っ赤になって激怒するの、面白いだろうな。
すべての準備が整ってあとは夜を待つばかり、やることもないので仮眠をとっておこうとベッドに横になる。ずっと使っていなかったのに寝具はきれいに整えられていた。我が子への母の気遣いだ。しかし円はそんなこと気に留めることもなく、静かに眠りに落ちていった。




