第5話―18 消えたコリンちゃん
準備を整えた円が、さあ行こうと声をかけようとしたその時、弥幸が「あっ」となにかに気づいたような声を出した。
「そうだカメラ、カメラがあった」言いながらテントのそばに設置してあった定点カメラに駆け寄る。「まずはこれを確認してみよう。なにかヒントが映っているかもしれない」
円の気分的にはすぐにでも飛び出していきたかったが、それをぐっと抑えてカメラの前に集まった。
「昨日戻ってきたのって夜中の0時過ぎだったよね」弥幸が問いかける。
「私が2時過ぎに目が覚めた時、コリンちゃんがいるの確認しています」円が答える。
「じゃあそこから、有明くんが起きた朝の5時頃までか⋯⋯」言いながら弥幸はカメラを操作していく。
途中、円がテントから出てきて、神社へ向かって歩いていく姿が映っていた。クソっ、カメラあることすっかり忘れてた、と円は内心毒づいた。
「これ、神谷さんはなにしてたんですか?」省吾が当然の疑問をぶつけてくる。
円は照れ笑いを浮かべてその時のことを手短に説明した。
「謎の発光体かあ」弥幸はカメラから目を離さないまま苦情を言った。「そういう面白いことがあった時はすぐ起こしてくれなくちゃあ」
「すいません」円は小さな声で謝罪した。
そうして見ていると画面に変化があった。時間は4時過ぎ頃。凛子がテントからゆっくりと出てきたのだ。彼女はゆっくり立ち上がると、そのままフラフラ歩いていく。深くうなだれていてその表情は確認できないが、とても正気だとは思えなかった。夢遊病患者はこんな感じだろうかと思わせる、おぼつかない足取りだった。
向かった先はやはりというかなんというか、誰もが想像していた通り、校門の向かいの神社だった。もちろんこの分校の出入り口も同じ方向なので、他の場所の可能性もゼロではないのだが、もう全員が確信していた。
「決まりだね」と弥幸。「神谷さんの見た発光体といい、コリンちゃんのこの様子といい、やっぱりあそこの神社にはなにかがあるんだ」
「ですね」円は同意する。
カメラを確認してよかったと円は思った。これで全員で迷いなく神社へ向かえる。もしカメラがなかったとしたら手分けして村の中を探すという状況になっていただろう。それではなにかあっても対処できないところだった。
「よし、それじゃあさっそく行ってみようか」弥幸が号令をかけ、前に出た。
「あっ、ちょっと待ってください」円がそれを制止する。「先輩はカメラで撮影をお願いします」
「うん?それはいいけど、それどころじゃ⋯⋯」弥幸は逡巡する。
「カメラじゃないと見えないものがあったじゃないですか」円はいままでカメラに映っていたモヤモヤのことを思った。それに怪異が相手なら弥幸はカメラがないと戦力にならない。
「ああ、そうか、そうだよね」弥幸は急いでカメラを取りに戻った。この状況で撮影の大義名分を得て、むしろ元気が出たようだ。
すべての準備を整えて、いよいよ敵地へと乗り込む。この時、円の心は焦燥感とともに、かつてないほどの盛り上がりを見せていた。完全にシチュエーションにあてられている。気分はお姫様を奪還に向かう勇者様だった。
「有明くん、行くよ」円は武道家・省吾に向かって指示を出すと、先頭に立って歩き出した。




