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空手バカ一代と行く、JDまどかの心霊探索ツアー  作者: AKTY
第5話 イケメン先輩の闇バイト !? ―廃村でお泊まり編―

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第5話―5 弥幸のアルバイト

「ああ、そうそう、心霊スポット。その話をしないとね」弥幸みゆきは本当に忘れていたとでもいうように、両手をポンと打ち合わせた。「今度はさ、ちょっと遠出してみない?」


「遠出、ですか?具体的にはどこへ行くんです?」まどかは警戒しながら尋ねる。


「実はね、◯◯県にある廃村に行かなきゃいけない用事があってね。知ってるかな?ネットでは ”H野村の怪死事件“ って呼ばれてるんだけど」


 ああ、あれか、と円は記憶を検索する。たしか小さな集落で起こったある一家の怪死事件をきっかけに、徐々に住人が越していき、ついには廃村になったとか。でもあれは――


「たしかそれって、全部作り話だったってやつですよね?」円は弥幸に疑いの目を向ける。まさかこの人がそんなベタな話に引っかかるとも思えない。


「さっすがあ、やっぱり知ってたね。そうそう全部ウソだった廃村の噂話。ただの限界集落がついに無人になっただけ」弥幸は愉快そうに笑う。「その由来として誰かが作った話があまりにも面白くて、それが一般化しちゃったっていうね。こういうのも面白いよね。フォークロアがどうやって形作られるか、検証したいところだね」


「じゃあ、その検証に行くんですか?」それなら正直微妙だなと円は思った。わざわざ遠出してまでやることでもない。まったく興味がないというわけではないが、やはり幽霊関連じゃないと触手が動かなかった。


「いや、ここがさ、けっこういいロケーションらしいんだよ。すぐ嘘がバレてあまり探索者が来なかったから、よくある心霊スポットみたいに荒れていないんだって」弥幸はそう言って、まるで秘密を打ち明けるように声を低くした。「実はね、その映像を資料として欲しがっている人がいてね」


 資料?なんの資料だろうか。そんなものいったいどうするというのだろう。映研とかその手のサークルの依頼か?でもそんなの自分で行けよって話だよな。円はあれこれ考えて首をひねった。


 弥幸は話を続ける。


「その人っていうのがさ、うちの叔母さんなんだよね。ホラー小説家でMAYOIって筆名で活動してるんだけど⋯⋯」


「ああ、知ってます!」円は一発で食いついた。「えっ !? MAYOI先生が叔母さんなんですか?マジ?私めっちゃ読んでますよ。たぶん全部読んでます」


 MAYOIは実話怪談系の小説で名を馳せる、売れっ子のホラー作家だ。円は中学生の頃から彼女の作品を愛読していた。その現実の出来事をそのまま書き写したようなリアルな筆致。それでいて必要とあらば自在に発揮される表現力。冷静に考えればありえないというような事象でも、彼女の筆にかかれば現実のものよりも現実的になる。端的に言って円は大ファンだった。


 興奮する円をシラケた顔で見ている凛子りんこ。凛子としては円のように思いっ切り食いついて弥幸にアピりたかったが、残念ながら彼女はその作家を知らなかった。それはそうだ、凛子はその手のものをいままでずっと避けてきたのだから。いま適当に話を合わせても間違いなくボロが出る。この後本屋に寄ってから帰ろうと凛子は決意していた。


「叔母はたまに心霊スポットの映像を撮ってくるように依頼してくるんだよ。ほら、僕いっぱい機材持ってたでしょ?あれ全部叔母からの借り物なんだ」


「それで心霊スポットにたくさん行ってたんですね」と省吾しょうごが口を挟んだ。


「まあね、毎回じゃないけどね」弥幸は頭を掻いた。「ただこれがね、趣味と実益を兼ねてて都合がいいんだ。報酬が出るから」


「報酬、ですか?」円が問う。


「そう、バイト代が出るの。その代わり仕事の出来にはうるさいんだけどね」


 そんなおいしい仕事が世の中にあるなんて、と円は羨望のまなざしを弥幸へ向ける。しかもあの、MAYOI先生からの依頼だと?なんなんだコイツ。そのルックス、そのコミュ力、そしてさらに、か。あまりの羨ましさに円は奥歯をギリギリと噛み締めた。


「それでさ、君たちもいっしょにどうかなって⋯⋯」


 その時、円はかつてないほどの反発心を心に抱いていた。そんなところ誰が行ってやるもんか、と弥幸を()めつけた。 



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