第5話―4 霊媒コリン、イタコリンちゃん
「あの方⋯⋯いつもあんな感じなんですか?」円はおそるおそる尋ねる。
「ん~、まあ、ああいう人だからね。なんか変な物いっぱい持ってるしね」弥幸は難しい顔をした。「でもオカルトに関する知識⋯⋯っていうか嗅覚?はすごいんだよ。めちゃくちゃに見えるけど」
「ええ、それはわかります」言いながら円は凛子を見た。たぶんあのマスクの下には丸くなった輪郭が隠れているのだろう。「ちゃんと憑き物落とせたみたいだし」
「コリンちゃん危なかったよね。なんだろね、コリンちゃんひとりを狙い撃ちだったね」
「ホントですよ〜。もう勘弁してくださいって感じです〜」凛子は弥幸に冗談めかして言ったが、心の底からの正真正銘の本音だった。
円はそんな凛子を見てニヤニヤと笑う。
「コリンちゃん、あれじゃない?霊媒体質ってやつ。恐山でイタコになりなよ。後継者不足らしいよ」
「あんたねぇ⋯⋯」凛子は眉間に深いシワを刻んで強く抗議しようとした。
「ほんと、すごいよね、コリンちゃん」弥幸が先に話しだした。「才能だよ、才能。オカ研に来てくれてほんとよかった。本当にありがとう」
弥幸はそう言いながら凛子の手を取り、ブンブンと上下に振った。凛子は突然の幸福を呑み込みきれないのか「えっ !? えっ !? 」と戸惑っている。
「あれってなんだったんでしょうね」と浮ついた凛子の気持ちなどお構いなしに省吾が疑問を投げかけた。
おいおいそんなこと聞いたらまた話が長くなる⋯⋯と円は思ったがもう遅かった。弥幸は待ってましたとばかりに語りだした。
「君たちに聞いた話だと、あのモヤモヤはいろんなタイプの ”足だけ幽霊“ だったわけでしょ?履いてるもので属性がわかったって神谷さん言ってたよね?⋯⋯うん、だよね。いろんな履物の ”足だけ幽霊“ だ。じゃああれはなにが由来なのか?たしかに大学にはいろんな人がいるけどさ、あれが全部大学の関係者とは考えづらいよね。だからね、あれは外からやってきたんだと思うんだ。ほら、浮遊霊ってやつだよ。前トンネルにいたよね。おそらく3号館の廊下のあたりが ”霊道“ になってるんだと思うんだ。そこを通っていた浮遊霊がたまたま目撃されたんだね。それで今回はさ、僕たちがコックリさんなんてやってたもんだから、気になって集まってきちゃったんだろうね」
あー長い長い、と円は思いながら聞いていたが、弥幸の長広舌にはそれなりに説得力があるような気がした。あれだけ多種多様な霊だ。外からやってきたと考えるのが自然だろう。
「その ”霊道“ というのはなんですか?」と省吾。
「ああ、 ”霊道“ というのは読んで字の如くだね。霊の通り道だよ。そういう場所で霊がよく目撃されて、心霊スポットになったりするらしいね」
「霊はそこを通ってどこへ行くんでしょうか?」省吾は重ねて問いかける。
「さあ、どこへ行くんだろうね。浮遊霊だからいろんなとこへ流れていくのかもだし、成仏する道だって意見もあるね。まあこればっかりはわからないよね」
「そんな幽霊がわど⋯⋯凛子さんに取り憑いてしまったんですね」
本名を呼ばれて我に返った凛子が省吾を睨みつけた。あのヘブン状態から呼び覚まされるとは、よっぽど呼ばれたくないらしい。タイミングを見て呼んでやろうと円は思った。
「そうだね、コリンちゃんと相性がよかったんだろうね。すんなり抜けてくれて助かったよ」弥幸はそう言ってから、さらに付け加えた。「思うんだけどね、あれは浮遊霊だったからこそ、すぐに出ていってくれたんじゃないかな。もしあれがあの場所に縛られているような強い霊だったら、もっと面倒なことになったと思うんだ。まあそれでも英依さんはなんとかしちゃいそうな気がするけどね」
最後の部分はたしかに同感だ、と円は思ったが、それはともかくこの話いつまで続くのだろうかと不安になった。たぶんほっとけばまだまだかかりそうな気がする。省吾がまた、意外と聞き上手なこともあって、弥幸は気持ちよさそうに話していた。円はそろそろ介入する必要があると考えた。
「あのう、先輩、それで次の心霊スポットというのはどうなったんですかね?」




