表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空手バカ一代と行く、JDまどかの心霊探索ツアー  作者: AKTY
第17話 弥幸先輩のぶらり湯けむりひとり旅―温泉地の怪奇現象編―

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
208/235

第17話―6 解説其の三

 さっそく温泉に向かった傾国顔の弥幸(みゆき)先輩。しかしこんな楽しいリゾートでも仕事を忘れないあたり、彼のマジメさが窺える。そのお仕事の最中、声をかけてきた者がいた。振り返るとそこには黒髪オカッパ着物の少女。


 おわかりいただけただろうか?そう、彼女はもちろん――この宿の子、女将サチコさんの娘のミユキちゃんである。おやおや弥幸と同じ名前だね。かわいいね。


 あれあれ〜もしかして座敷わらしとか思っちゃいましたか〜?それはいけませんねぇ。まあいないとは思いますが、もしそういう方いらっしゃいましたら、まだ少し弥幸先輩についての理解が足りないようなので、第1話から再読してきてください。えっ、第1話には弥幸は出てないって?ダメです。第1話からお願いします。


 霊感ゼロが極まって、専門家のお墨付きも頂いている弥幸である。会話をしている時点でそれは怪異ではないのだ。宿の子であるミユキちゃんはとびきり美しいお顔の青年を見かけて、つい声をかけてしまった。これは日頃から客商売の教育が行き届いている彼女には珍しいことだった。


 ミユキちゃんはとてもとても大事にされている。母親にはもちろん、従業員たちにも。サチコさんには遅くにようやく授かった娘であった。彼女が生まれて間もなく夫を亡くしたときは絶望したが、すぐに自分を奮い立たせた。亡き夫の一粒種、健やかに育まなければ。ここで働く者もみなわかっていた。女将が忙しいときにはそれぞれで目をかけて、教えるべきことはしっかり教えた。


 しかしこのミユキちゃん、少しだけ変わったところがあった。洋服を着たがらないのである。ワガママなど言わない子だが、これだけはどうしても譲らなかった。どんなにキレイで新しい洋服を買い与えても、けっして袖を通そうとしない。


 これには大人たちも首をひねるばかりだが、理由はちゃんとあった。実は彼女、髪型も服装も、大の親友とおそろいにしているのである。その親友はいつもミユキちゃんといっしょにいて遊んでいるが、大人には見えないようだ。極稀に客のなかにその姿を目にする人もいるみたいだが、その人たちはそれを座敷わらしと呼んだ。


 女将も従業員もミユキちゃんのことを言われているのだろうと思って気にしなかったが、恩恵は受けている。サチコさんのFXがそれだ。たいへん控えめな効果であった。旅館を繁盛させてやればいいのに。でも仕方ない。座敷わらしはあくまでもミユキちゃんのお友だちなのだ。もしも彼女がこの旅館を継ぐ日が来たならば、座敷わらしもおおいに張り切って、この地に大ホテル王が誕生するやもしれぬ。


 思わず声をかけてしまいはにかんだミユキちゃん。その隣には座敷わらしがいた。そいつはそっと耳打ちする。


「この人いいね、お婿さんにしなよ」


 急にそんなことを言われてミユキちゃんは駆けだした。恥ずかしくなったのだ。本当ならそのまま逃げ出したかったが、思い出してきちんとお辞儀した。やっぱりかわいいね。座敷わらしはまだ弥幸の正面に立ってその顔を見上げている。ミユキちゃんはもう待つことなく、回れ右してまた駆けてった。


 もしこの時、ミユキちゃんがうんと言っていたならどうなったのか?座敷わらしの力で弥幸は婿入していたのか?そうなったら夫婦で同姓同名でややこしい限りだが、そうはならないだろう。あらゆる怪異は弥幸に影響を及ぼすことができない。それは座敷わらしも同じである。


 それから弥幸は浴場へ。男湯の暖簾をくぐる。座敷わらしもついてきているが、ここは男湯だよ?大丈夫?弥幸の隣で着物を脱ぐと、そこには小さいのがぶらさがっていた。ワァオ男の娘でございましたか!それはそれはお見逸れいたしました。


 弥幸といっしょに湯に浸かっていると、そんな座敷わらしくんに話しかける者がいた。


「よお、こんな時間にここに来るとは珍しいな」


 湯けむりの中から現れたのはカッパであった。頭には皿、背には甲羅、クチバシがあり、緑色。古式ゆかしきスタイルである。ただその肉体だけは少しばかり違うようだ。力が強いのは知られているが、絵などではヒョロっとしているカッパ族。だがコイツは違う。筋骨隆々のゴリマッチョ。背中の甲羅が小さく見えた。


 座敷わらしはミユキちゃん以外には口数少ないようで、なにも言わずに頷いた。カッパは近寄ってきて、ようやくその横にいる弥幸を見た。


 その時――カッパに電流走る!


「あらぁん、なにこのコ、超イケメンじゃ~ん!」急にオネエ口調で座敷わらしの肩を揺さぶる。「ねえねえちょっと、誰よこの人?お客さん?紹介しなさいよぉ」


 紹介しようにも座敷わらしはこのイケメンの名前を知らない。首を振って応えた。カッパはそれで察して黙って反対側の弥幸の隣に落ち着いた。ノンビリリラックス気分の弥幸は、このとき妖怪にサンドイッチされていたわけだ。


 露天風呂にもついてきて、同じ並びで湯に浸かった。これはこれで日本的な風情ある景色だったかもしれない。見えていればの話だが。


 あ、それからもうひとつ、露天風呂ではあることが起こっていた。それは女湯の側でだ。


 弥幸の予想したとおり、大岩の向こうが女湯であったが、そこには湯けむりに紛れて人影があった。ジッと弥幸のことを覗いている。女カッパでもいたのか?それならお酒のCMみたいでいい感じだが⋯⋯


 そこにいたのは女将サチコさんであった。彼女は密かに弥幸の動向を探り、こうして従業員しか知らないベストスポットからノゾキを働いていた。ミユキちゃんのママ、なにやってんの?


 その眺めを十分堪能したのち、なに食わぬ顔で弥幸を待ち受けていたのであった。怖いですね〜今夜がちょっと心配になりますね〜


 言うまでもなくノゾキは犯罪です。よい子のみんなは、やめようね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ