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空手バカ一代と行く、JDまどかの心霊探索ツアー  作者: AKTY
第12話 対決 !? 人を襲うシャドーピープル?―高架下の公園編―

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第12話―10 VS シャドーピープル

「それは逃げてったふたりのうちのどっちかって可能性もあるんじゃない?」そんな自分でも思ってないようなことを、(まどか)は一応尋ねてみた。


「いえ、あのふたりもレスラーではないです。というかどんな格闘技も習得していないでしょう」省吾(しょうご)は断言する。


「そういうのわかるんだ?」円は暗がりの方から目を逸らさないまま聞いた。


「はい、立ち姿を見れば明らかです」


 さすが立ち方にはこだわりのある省吾である。他人の立ち姿でもいろいろわかるらしい。おそらく省吾の目には円などはその性根と同じで歪みまくって映っているのだろう。とするとこれから出てくるのがその "レスラー" ってわけだ。ん?そういえばレスラーってなんだろう。プロレスラーってことかな?と円は首を傾げる。村上は天敵とか言っていたが⋯⋯


 変化はふたりが気をつけていた柱の奥ではなく、すぐ手前の柱に現れた。広場の外灯の明かりに照らされて、そこに何者かの影が映し出される。円がハッと振り返ってみても、そのような影の元になる人物はいない。そいつは地面から伸びてきて、ちょうど省吾と同じくらいの高さになると、柱から浮かびあがるように立体感を増していく。


 まさに影人間、シャドーピープルであった。もちろんそれは見た目だけ、実際同質のものなのかは円には判断できないが。目の前にいるそいつは端からやる気のようで、すでに体勢を低く、身構えている。


「神谷さん、下がっていてください」そう言いながら省吾自身は前方に進み出た。特に構えを取ることなく歩いていき、ぎりぎり攻撃が届かない程度の間合いを取って立ち止まった。


 言われて円は一歩だけ後ろに退いて、そんな省吾の様子を眺めた。自分はこのまま見ているだけでいいのだろうか?助けを呼ぶべきでは?ちょっと行った先の駐車場には弥幸と村上、ついでに吉本もいる。だが円はそうする気持ちにはなれなかった。それどころか自分のスマホを取り出すことすら躊躇われた。


 シャドーピープルが他の者がいるときに出てこなかったのにはきっと理由がある。仮にいま誰かが駆けつけたとしたら、あの影はいなくなってしまうのではないか?自分はたまたま滑り込みで入場に間に合っただけ。これはあくまでも空手バカとシャドーピープルの対決なのだ。ならばここは勝負の邪魔になる行動は控え、ただの観客として大人しくしておこう。


 広場の中央付近で正対した省吾とシャドーピープルは互いの出方を窺うように、その場で止まったまま動かなかった。変わらず低い構えのシャドーピープルと、円の目にはただ突っ立っているだけに見える省吾。これは睨み合いというところか?相手に目らしき部位は確認できないが。


 高まる緊張感に円はゴクリと唾を飲み込んだ。もうずいぶん時間が経ったような気がしていたが、実際はまだ30秒にも満たない。この空間そのものが外界から隔離されているかのような、そんな頼りないというか、拠り所のない感覚に襲われた。


 そしてついに闘いが動き出す。


 まず最初の一歩を踏み出したのは省吾だった。そのまま歩いていくように距離を縮めると、フェイントもなにもなく、ただ右の拳をまっすぐ放った。シャドーピープルはそのタイミングを待っていたかのように、低い構えをさらに低くして、省吾の懐に飛び込む。


 レスリングで言うところの両足タックル。省吾のヒザ裏を両腕で抱え込むように掴みにきた。しかし省吾は驚くべき反応の速さでこれを阻止する。シャドーピープルの顔の下に腕を差し込み、密着されるのを防ぎながら、相手の肩口を胸で抑え、足は後方に投げ出して、押し潰すように体重をかける。腰を切ってわずかに掴んでいた手を外すと、そのまま後ろに飛び退る。


 完璧なテイクダウンディフェンスだった。もちろんこんな攻防は円には理解できないが、その動きの素早さに「おぉ」と声が漏れる。たぶん攻撃に合わせて飛び込んできたあれが "レスラー" の動きというやつなんだろう。それに省吾は対処してみせたのだ。なかなかやるじゃないか。


 そんな観客の反応などには構わずに、シャドーピープルは今度は先手を取りにきた。先ほどよりは遠間から一瞬で体勢を低くし、今度は省吾の足首を掴みにくる。だが省吾はこれにも対応する。触られる前に足を引き、飛び込んできた相手の頭部を手で地面に押しつけるように抑えると、それをバネにまたパッと後ろに下がった。

 

 三度(みたび)正対する両者。省吾はまたバカ正直な右ストレート。やはりタックルを合わせるシャドーピープルだったが、これは誘いだった。今度の省吾の突きは後ろ足に重心を残したままの見せかけのものだった。狙いはひとつ、飛び込んできた相手の頭部にカウンターのヒザが一閃!


 崩れ落ちるシャドーピープル。省吾は右拳を腰に引き、左手で制するように払う。残心である。まだ警戒を解かず、慎重に相手の出方を窺っている。


 その時後方から声が聞こえた。


「ほら~やっぱりなんかやってるじゃ〜ん」一気に場の空気を緩ませるこれは、弥幸(みゆき)の声。


 円がそちらに目を向けると、弥幸と村上が駆けてくるところだった。ああ、アイツラ来ちゃったか、でもいまはそれどころじゃねえ、と視線を戻すが、その時にはシャドーピープルは跡形もなく消え失せていた。


「あ~あ、消えちゃった」円はチッと舌打ちして、残心を解いた省吾の方へ歩いていく。「でもまあいいか、あれもう決着ついてたよね?」


「手応えはありました」省吾は肯定する。


「どう?あれがレスラーでいいの?シャドーピープルレスラー?」円はただくっつけただけの雑な名前を付けた。


「はい」省吾は頷いたあと、少し眉をしかめて首を傾けた。「でもちょっとスタイルが古かったですね」



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