第12話―9 締まらない結末
「ジュンさんってあれじゃろ?ここで黒い影にやられたっていう」村上の問いかけに吉本が頷く。「なんじゃなんじゃ、結局ヤンキーの勢力争いかい!締まらんのう。話し持ちかけた俺の面目丸潰れやないかい」
まったく持ってその通り。こんなクソみたいなことに巻き込みやがって、腐れヤンキーがッ!と円も憤った。襲撃者を退けて安心したのもあるにはあるが、それ以上に完全に気持ちが萎えてしまっていた。それは弥幸も同じようで、そのイケメンもどんより曇り、さっきまで熱心に構えていたカメラをすでに下ろしてしまっている。
「いや、ジュンさんはもう更生してて、コイツラのだって逆恨みみたいなもんで⋯⋯」と吉本は弁解するが、ええてええてと村上は手を振って受けつけない。事情がどうあれ、もう自分には関係ないと考えているようだ。
円も同感であった。なにがジュンさんだ。妹はホタルで親父はゴロウか、ルールル言ってやがれコンチクショウ!そんなヤツが更生しようが、ムショで臭いメシ食おうが知ったことじゃねえわ。
「なあ弥幸、スマンかったの。神谷さんと省吾も面倒かけてスマン」村上は両手を合わせ、拝むように謝罪した。それから「さて、コイツはどうしようか」と未だに動きしない襲撃者を指差す。
「頭は打たないように気をつけたんですけどね。襲いかかってきた勢いがよすぎたんでしょうね」と省吾が解説する。
「それならアテがありますんで、そこに任せましょう」と吉本が提案した。
「なんじゃ、仲間のところに連れて行ってリンチでもするんか?」村上が鋭い視線を吉本へ向ける。
「そんなんじゃないッスよ。俺らホントにそういうんじゃないんスから」と吉本は首を横にブンブン振って否定した。「この近くの飲み屋の大将が俺らみたいのに一目置かれてるんスよ。その人なら中立だから、たぶんコイツの仲間にも連絡つくと思うんで」
それに納得した村上は吉本とふたりで襲撃者を担ぎ上げ、とりあえず駐車場のMAYOI号まで連れていく。そのあとを期待外れな結末で意気消沈の弥幸と円が続いた。その足取りはズッシリ重い。円は自分も担いでってくれないかなあと思った。
少し歩いてから円はふと振り返る。見ると省吾がついてきていない。なんだろうと不思議に思い、それからやけに胸騒ぎがして引き返した。すぐに省吾の姿が見えた。彼はそのままの場所に微動だにせず佇んでいる。視線は――さっきヤツラが出てきた高架下の柱の奥の方を向いていた。
なにかを見ている?まさかまだアイツラそこにいるのか?と一瞬思ったが、すぐにそうじゃないことに気がついた。違う、そうじゃない。あの時とは雰囲気がぜんぜん違う。これはそう、自分も知っているアレだ。もう何回も経験してきたあの感じ。身体の回りをネットリと重たい空気が包み込む。
「有明くん、これって⋯⋯」円は喉がかすれて声が出にくかったが、なんとか絞り出すように尋ねた。
「神谷さん、まだです」省吾は静かな、しかし決然たる調子で返す。「さっきのあの中にレスラーはいませんでした」




