第12話―8 対決!襲撃者たち
ヤンキー、浮浪者、反社会的組織、それらが円が心霊スポット探索をするにあたり脅威と感じてきたものだ。そのような場所にはこの手の輩がたむろする。そんなネットの情報を鵜呑みにし、それがために人並み外れた幽霊への関心を抱きながらも、大学生になるまで指をくわえて他人の探索動画を見ている他なかった。
大学で偶然出会った空手バカ、有明省吾を仲間に引き入れたのもそれらから身を守るのが目的だった。対人用ボディガードこそが、そもそもの省吾の役割なのだ。幸いにもこれまでそういった者たちとの接触はなく、なぜか空手バカ vs オバケという対決ばかりであったが、いままさに、かつて想定していた緊急事態が間近に迫っている。
ヤベえよヤベえよ⋯⋯円は混乱して、こんな時取るべき行動をなにも思い浮かばない。ただ目の前で展開しつつある状況に立ち竦むのみだ。あれこそヤンキー、浮浪者、反社会的組織のどれかだろう。たぶん身なりからして浮浪者ではないからヤンキーか反社会的組織か、その両方か。
「おう、なんじゃお前ら」村上がさすが空手部エースの胆力で相手を威圧するようにヌッと立ちあがった。
無造作に近づいてきていた三人はそれで一度立ち止まる。こんな時村上の巨体はいかにもハッタリがきいている。相手も警戒感を顕にし、少しづつ間合いを測るように動き出した。
「おうおう、なんか用でもあるんか?ひょっとしてコイツを後ろから殴ったのもお前らか?」村上は親指で背後の吉本を指し示す。「ま、そうやろな。そんな怪しいカッコして通りすがりってことはないもんな。その後ろ手に隠してるのでガツンとやったわけか」
村上の言葉に円は男たちの手元に目を向ける。たしかに全員が不自然に片腕を背中に隠している。おいおいマジか?こんな格好して凶器なんか持ってんのか?そんなの絶対悪人じゃねえか!おい村上、挑発してるけど大丈夫なんだろうな?こっちには戦う術を持たない女とイケメンがいるんだぞ、わかってんのか?
「はぁ、ダンマリかい」村上は息をついて円の方を見やり、話しかける。「スマンの、これがオバケの正体みたいじゃ。つまらん話だったのう。こんなクソみたいなのが正体だなんて、まったく慣れんことはするもんじゃないわい」
(おま、お前話しかけんじゃねえよ !? こっちはステルス状態で気配消そうとしてんだろうが!)円の心の叫びは届かない。村上はなぜかニヤニヤしてウインクなんか飛ばしてくる。
そんな村上の言葉や態度が癇に障ったのか、それともよそ見しているのを好機だと捉えたか、一番手前にいた男が突然村上に襲いかかった。その手に持った棒状のもの――特殊警棒だろうか――を振りかぶる。
「あっ !? 」とステルス円も思わず声を出したその瞬間――男は派手に宙を舞った。クルッと一回転して背中から地面に落ちる。男の口から「ウッ」と息が漏れた。固い地面に激しく背中を打ちつけて息ができないのであろう、そのまま立ち上がることなく転がっている。
「ほ〜よく回ったのう。お前合気道もやっとるんか?」村上は自分の目の前にいる省吾に尋ねた。
「いえ、やったことはないですが、原理は同じでしょうね。ちょっと重心を崩してあげれば人間は簡単に転びますから」と省吾はなんでもないように答える。
これで同数、しかも相手はこんな状況でも余裕のある態度を崩さない大男とおかしな技を使った空手着?の男。武器を持っていてもさすがに形勢不利とみたか、襲撃者たちは踵を返し、脱兎のごとく逃げ出した。倒れている仲間は置き去りである。
「あ~あ、逃げてしもうた。輪をかけてつまらんのう」村上は両手を突きあげ伸びをする。それから倒れている男にしゃがみ込んだ。「どれ、顔を見とこうか」そう言って目出し帽を勢いよく引っ剥がす。
「あっ!コイツ、ジュンさんのグループと前に揉めてたヤツだ」顔を確認した吉本がそう言った。




