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空手バカ一代と行く、JDまどかの心霊探索ツアー  作者: AKTY
第9話 またぐなよ!異界との境界線―町のオバケ踏切編―

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第9話―2 N木のオバケ踏切

「⋯⋯ということがあったんですよ」(まどか)は箸で相手を指してそう言った。


 その相手の三浦弥幸(みうらみゆき)はこの無礼な後輩の態度にもニコニコ顔で話を聞いている。彼の手元にはきれいな彩りのお弁当が広げられていて、それを食べる様子をジッと見守る和道凛子(わどうりんこ)が隣にいた。


「ああ、N木のね。けっこうネットでもその手の噂聞くよね」弥幸はウンウンと頷いている。


「これってどうなんでしょうね?やっぱりなにかおかしなものが見えたとか?」円自身半信半疑ではあったが、一応そう尋ねてみた。


「ウ~ン、どうだろね」弥幸もまだ慎重だ。「 "オバケ踏切" なんて二つ名がつくぐらいだからなにかしらの現象が起こる場所ではあるんだろうけどね。でも今回がそれとは断定できないよね」


「まあそうですよね」円も同意する。「見てたわけじゃないんで。単に誰かが踏切に侵入しただけかもだし、なにかを誤認しただけとか、犬猫のたぐいかもしれないし」


 結局女性ふたりがその噂話をしていただけで、なんの確認も取れていないのだ。でも⋯⋯


「その話をしていた人たちはよくあること、みたいな感じだったんですよねえ⋯⋯」


「たしかにね」弥幸は傍らに置いてあるパソコンをカタカタやっている。食事を途中で投げ出す形だったので凛子が少し不満げだ。「うん、SNSでもいくらかそういう書き込みがあるね。あの路線を毎日使っている人にとっては日常的に起こっていることなのかも」


「それ実際なにかを見たって証言はないんですか?」円がさらに質問すると、凛子は恨みがましい視線を飛ばしてきた。面倒なので円は気づかないフリをする。


「なくはない。というかむしろ多いくらいだけど、なんかなあ、その手の話はどれも妙に詳細なんだよなあ」弥幸は腕を枕に椅子の背もたれに仰け反った。


 ああ、はいはい、アレだ。証言者が話を面白くしようとして脚色するやつ。そんなモリモリに盛られてもウソくさくなるだけだっての。


「それはちょっと信用できないですよねえ」円は難しい顔をした。


「まあねえ、その詳しい証言のなかにも共通点とかあれば、そこからエッセンスを抽出することはできるんだけど⋯⋯」弥幸はチラッと画面を見る。「いろいろパターンがありすぎなんだよね。定番の女の影から、子ども、老婆、老爺、おじさんとかおばさんとか、犬が現れてパッと消えた、なんてのもある」 


 円もスマホで検索してみる。まとめサイトがあったので開いてみると、見出しだけでも多種多様な目撃証言が並んでいた。なかには下半身がない女性という話もある。おお、テケテケじゃねえか!メジャー怪異とのコラボである。


「なんかもう、ネタの発表会的なのになってますね」円は呆れながらページを閉じた。「ちょっと面白そうだと思ったんだけどなあ」


「これはさすがにちょっとね」心霊ネタにはなんでも飛びついてきた弥幸もあまり乗り気ではないようだ。「でもここはアレだけど、踏切ってのは気になるスポットではあるよね。境界を区切る場所ってことで、ちょっと象徴的な雰囲気もあるしね。いい場所が近くにあるならぜひ検証してみたい⋯⋯けどねえ、ちょっと問題がね⋯⋯」


「問題ですか?」


「うん、ほら踏切ってさ、普通に人が来るとこじゃん?心霊現象待ちの張り込みがしづらいよね」


「ああ、たしかに」円は合点がいった。いくら弥幸であってもそんな不審な行動は取り難いよな。いや、むしろ長時間踏切のそばに佇む超絶イケメンとか、それ自体が都市伝説になりかねない。「やめといたほうがいいですね」


 話がまとまり、食事が再開された。正直もう円の食欲は失せてしまっている。そもそも食事の途中でこんなに長々と会話をするなんて、まどかの流儀ではありえないことだ。しかし今日はそうせざるを得なかった。なんだ?なんだこの味わいは?楽しみにしていたカップ麺はまさしく "無" であった。なぜこれを売ろうと思った?いや、そもそもどんな手を使って発売までこぎつけたのか?


 円はこの、より大きな世界の謎から目を逸らすために、電車での出来事を話し出したのだ。電車のほうもさほど盛りあがることなく、なんとも意気阻喪してしまう昼食となってしまった。



 食事が済み、弥幸からの称賛で上機嫌になっていた凛子は、ここまでで誰もが思っていたであろう疑問をポロっと口にする。


「そういえば〜今日って省吾くんいっしょじゃないんだね〜どうしたの?なんかあった?」


 この質問に円は両眼をカッと見開いた!


「ウワーッ忘れてたーッ!」


 ウワーッ忘れてたーッ!そうだ、有明省吾(ありあけしょうご)がいないじゃないか!我らが空手バカはいったいどこへ?謎が謎を呼び、次回へ続くのだった。



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