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空手バカ一代と行く、JDまどかの心霊探索ツアー  作者: AKTY
第8話 元ボッチ少女と空手バカ、心機一転の新学期―空手激闘編―

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第8話―番外編 村上竜一ナイト 後編

「それじゃ、神谷さんと有明くんの正式入部を祝して、かんぱ~い!」手短に挨拶したあと、弥幸(みゆき)はこう言って杯を掲げ、音頭を取った。それから弥幸は部員たちを回ってグラスをぶつけていく。


 楽しそうなオカ研メンバーをよそに、いまいち意気の上がらない村上は、ビールのジョッキをグイグイ空けてウサを晴らそうとしていた。自分で参加したいと言い出した手前、不機嫌さを表に出すことはなかったが、かわりに酒量だけが積み重なっていく。ビールくらいで酔いはしないが、むしろそれが恨めしい。いまは酔いつぶれてしまいたい気分だった。


「いい飲みっぷりだね」最後に回ってきた弥幸は村上のジョッキに自分のジョッキを当ててそう言った。そのまま腰を落ち着けるつもりらしく、正面に座る。


「おう、めでたい席だ。お前も飲めや」と体育会的圧で弥幸に迫る。弥幸は言われてジョッキをグイッとあおった。「おお、やるやんけ。じゃあもう一杯な、すいませ〜ん生ふたつ〜」


 見るとしっかり弥幸の隣にやってきていたコリンちゃんがなにか思案するように手を口元に当てている。このとき凛子(りんこ)はある企みを思いついていた。このままどんどん飲ませて、弥幸を酔い潰したらお持ち帰りできるのでは?実は優等生のギャルモドキなお前が持ち帰ってどうするんだ!というツッコミは置いておこう。これは村上視点のお話である。彼には凛子の思惑など測りようがない。


 とにかく村上はグイグイ飲んで、弥幸にグイグイ飲ませた。幸い矛先は1年生たちには向けられない。いかに体育会系であっても、いや体育会系だからこそ、いまどきのコンプラはわきまえている。公共の場での未成年飲酒などもってのほかだ。


 酔わないつもりの村上も徐々に酒の力で気分がほぐれてきた。「お~い」と手招きをして省吾を呼び寄せる。ずっと地味女の相手をしていた省吾はすぐに席を離れてやってきた。


「省吾お前、えらいあのコと仲良いやんけ。付きおうてるんか?」酔っぱらいの村上がズケズケと尋ねる。


「いえ、そういう関係ではありません」省吾は慌てることすらなくハッキリ答えた。


「え〜、でも省吾くんと円ちゃんいつもいっしょにいるじゃ〜ん」なぜか参戦してくるコリンちゃん。


 やはりギャルは恋バナが好きなのか?ならばと村上もさらに追及する。


「なんじゃ、男女がいつもいっしょにおるんなら、もう付き合ってるようなもんやろ」村上は小学生のような理屈をぶつけた。実際村上のこの分野の経験値は小学生並である。


「そうそう、もう付き合っちゃいなよ〜」コリンちゃんはこんな村上理論にも乗っかって、離れたところにいる地味女になにか合図を送った。


 ん、なんだろう?これは女子同士の同盟だろうか?あの地味女が省吾を狙っていて、そのサポートを友人であるコリンちゃんがやっている。そういう構図か?自分で始めたことながら、なんか他人の幸せの手助けをしているようで、村上はだんだん面白くなくなってきた。


 それから村上は急に方針転換し、省吾に空手の話を振った。すると省吾は水を得た魚で、村上にとっても参考になるような考え方が次々飛び出した。村上の恋愛理論とは違う、信頼と実績の省吾の空手理論である。ふたりは立ち上がり、型の動きを確認したりもした。他の客もいる、さほど広くはない座敷で、たいへん迷惑なことであった。


 コリンちゃんは完全に興味を失い、弥幸とばかり話している。地味女は近づいてはこないが、飲み食いしながら省吾のことを眺めているようだ。やはりここはそういう関係か、と村上は確信した。


 宴もたけなわ、村上もだいぶ酔いが回ったその時、弥幸のスマホが鳴る。


「あ、うん、座敷にいるよ〜」弥幸はそれだけ返事をして、そそくさと場を整え始めた。


 そこについに現れたのがオカ研の女神、芦原(あしはら)英依(はなえ)であった。スラッとした長身を包む黒くゴシックな衣服が目に眩しい。黒なのに。


 まあこれは村上の瞳に映った英依である。彼はその姿をひと目拝んで、もう感極まって涙がこぼれそうだった。"行けたら行く" で本当に来てくれるなんて、英依さんはやはり誠実な方だ、好きだ。


「あら?なんで竜一がいるの?」英依は開口一番疑問を呈した。


 そんな言葉ですら村上の気持ちを盛り上げる。村上はサッと立ち上がると英依をエスコートしようと一歩踏み出した。ところがここにきて足が言うことをきかない。千鳥足になって英依に覆いかぶさるようにして倒れ込んだ。


 危ない英依さん!村上の巨体が彼女に迫るッ!


 だが彼女は冷静だった。スルッと脇に身をかわすと、前のめりになった村上の腹部へ強烈な左のヒザ、完璧なタイミングのテンカオを突き刺した!


「グエッ」といううめき声とともに巨体がマットに、いや座敷の畳に沈む。すでに省吾の突きで傷んでいた腹である。この追い打ちには耐えられなかった。村上はそのまま起き上がれず、本日2度目のKO負けを喫した。



 それから英依を加えたオカ研の歓迎会は活況であった。結局酔いも手伝って眠りに落ちた村上はそのことを知らない。彼はお開きの直前に弥幸に肩を揺さぶられて目を覚ました。ノロノロと起き上がった村上の正面には英依。彼の寝ぼけた(まなこ)には、英依の優しい微笑みがしっかりと刻み込まれた。



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