第7話―エピローグ
その後、弥幸が手早く用意した朝食を食べ終えると、英依は来た時と同じ黒尽くめに着替え、バイクに跨って去っていった。
例の鏡はその帰り支度の際、箱ごと無造作に英依の荷物に突っ込まれた。
「その鏡、どうするんですか?」円はちょうどその現場を目撃して、英依の背後から問いかけた。
「ん?」英依はちょっと円を見やって、それからまた元に戻り荷物をゴソゴソやっている。「⋯⋯そうね、このまま放置しちゃうとまた漏れ出てきちゃうでしょ?そうならないように私が適切に管理することにするわ」
管理って、どうやって⋯⋯と疑問に思いながら、円は英依のことを観察していた。整理がついたのか荷物を手に立ち上がり、円の方へ向き直る。そんな彼女の表情はやけに緩んでいて、なんだか嬉しそうだ。
(これはっ!)円は気がついた。これこそが俗に言う "ほくほく顔" というやつではないか?管理とかなんとか言ってるけど絶対ウソだ!新しい呪いのアイテム的なヤツが手に入って大満足!それこそが彼女のいまの心境だろう。
そうなるとあの中身が気になるところ。あそこにはきっと、以前見た髪の毛っぽいのとかも入っているだろう。他にもどんな危ない物が入っているか⋯⋯あの新入りの鏡はそんなカオスなところに放り込まれたのだ。
かなり不気味だが、ちょっと⋯⋯いや、だいぶ中を覗いてみたい。円はそう思いながら英依が肩にかけた荷物を凝視する。
「フフ、そのうちね」英依はそう言い残すと、スタスタ表に出ていった。
⋯⋯こころ読むの、勘弁してよと顔を青くして、円はその後ろ姿を見送った。
英依が去ったあとは全員で合宿の後始末。円と凛子は簡単に家の中の掃除、省吾は掘った穴を埋める作業、弥幸は借りた物を返却に出ていった。円は相変わらずフラフラとサボりながら、自然とあちこち見て回り、最終的に祠の前にやってきた。
祠は扉が破壊されたまま放置されている。円は英依によって外され、地面に置かれたままになっていた扉の片側を拾いあげると、あれこれ工夫しながら元の位置に無理やり押し込んだ。触ればすぐに外れる状態だが、一応元に戻ったように見える。
その出来栄えに満足した円は祠の前で姿勢を正し、柏手を打った。
(なんとかリン様、とりあえずこんなところで勘弁してください)心の中でお祈りをする。
(いいんですよ)
声が聞こえた気がして、円はハッと顔をあげた。後ろを振り返ってみても誰もいない。少しゾッとしたが、別に悪い感じもないので、まあいいか、と。お辞儀をしてその場をあとにした。
弥幸も戻ってきて、全員で片付けを終えると、あとはもう帰るだけ。荷物を車に積み込んで、最後にあまり使われなかった表の玄関を施錠した。弥幸が横一列に並ぶよう指示をする。
「いろいろお世話になりました」列の端に立った弥幸が、そう言って家に深々と礼をし、他の者もそれに倣った。
(ああ、終わったなあ)円は車に乗り込み、グッタリと座席に身を預けながら、しみじみそう思った。(⋯⋯合宿、面白かったなあ)
目を閉じて出来事を頭に思い浮かべる。仲間と泊まりがけの夏合宿、そんなのに自分が参加できるなんて⋯⋯しかもこんなにも楽しめるなんて⋯⋯
ついつい自分の顔が綻んでしまうことを自覚した。いかんいかんと顔を手で覆う。円はそうしながら考えていた。入部してもいいかもなあ、と。
心残りといえばひとつだけ、最後の朝食がタモリ飯ではなかったこと。どうやってまたアレにありつこうかと、円は策謀を巡らすのだった。
第7話 了
あとがき
どうもどうも、ここまでお付き合いいただきまして誠にありがとうございます。
今回は長くなりまして、最長だった第5話も余裕でぶち抜いてやりましたよ。まあ弥幸の野郎が合宿と言った時点で覚悟はしてましたからね。腰を据えていろいろと散りばめたりしました。
その散りばめたいろいろですが、みなさん見つけられたかな?
しつこいくらいに繰り返したタモリネタ以外にもね、あるんですよちょこちょこと。見つけたっていいことなんてなんもないですけどね。間違っても探してみようなんて思わないでください。時間は有限です。
ま、あえて言うならドリフですかね。これはドリフですよというヒント付きの回があったりします。
タモリとかドリフとかジェイソン・ステイサムとか、一応はホラージャンルに籍を置きながらなにやってんですかね。あ、そういえば自作の別のに登場する神さまにもちょっとだけお出で願っていますね。すぐ上の方にセリフもありました。
とにかくネタだけはあれこれ散りばめつつも、どういうのが出てどうやってやっつけるかはノープランだったんですが、意外といい感じにまとまりがつきました。置いててよかった井戸と祠、やっててよかったボトルキャップチャレンジですね。なんとかなるもんです。
さて、このあとの予定ですが、次はちょっと番外編の短い話を挟もうと思っています。ギャグ回的なヤツですね。いつもだろって気もしますが、それは置いといて。もう神さまこっちにも出しちゃったんで、ならバカまどかからも接続しようかなって。
そういうのもやりつつ、まだまだ物語は続くと思いますんで、今後とも読んでいただければ嬉しいです。
その際ね、ちょろっとコメントとかブクマとか、それからポイント評価なんかもポチッとやっていただければ、やる気がみなぎりますんでね、どうぞよろしくお願いします。
AKTY




